セッション情報 シンポジウム1 「消化管疾患における画像診断の進歩」

タイトル

特発性孤立性上腸間膜動脈解離の早期診断におけるmulti-detector CT(MDCT)の重要性

演者 坂本 淳(札幌東徳洲会病院)
共同演者 太田 智之(札幌東徳洲会病院), 巽 亮二(札幌東徳洲会病院), 松原 悠(札幌東徳洲会病院), 好崎 浩司(札幌東徳洲会病院), 佐藤 龍(札幌東徳洲会病院), 網塚 久人(札幌東徳洲会病院), 木村 圭介(札幌東徳洲会病院)
抄録 【背景と目的】特発性孤立性上腸間膜動脈解離(以下SMA解離)は比較的まれな疾患で,報告の多くは救急・循環器領域からなされており,消化器領域での認知度は高くない.しかし,急性腹症として受診することが多く,緊急手術や血管内治療を必要とする場合もあり,早期の診断は極めて重要である.血管病変ではあるが消化器領域の診療にたずさわる医師も留意すべき疾患の一つと考えられる.近年のCT画像診断能の向上により,以前よりも早期診断が容易になってきたため,当院でSMA解離と診断した症例を調査しMDCTの重要性について検討した.【対象】当院では2008年10月から2012年10月までの間に,SMA解離と診断した11例を対象とした.【結果】男性が9例(82%)を占め平均年齢は55.2歳であった.既往歴として高血圧が5例,脂質代謝異常症は6例,喫煙歴は7例に認めた.症状の発症転機は8例(73%)が突発性で,3例(27%)は緩徐に発症していた.全例にCTが施行され診断に至っていた.当院のCTはLightSpeed Ultra(GE社製,2.5mm×8素子)とBrilliance64(Philips社製,0.625mm×64素子)の2機種を使用.急性腹症の患者に対して,横隔膜から骨盤腔の範囲で,単純CT,2 phaseの造影CT(早期相,平衡相)を行っている.どちらの機種で検査を行っても検出可能だったが,造影早期相では全例で解離の診断ができたにもかかわらず,平衡相では4例で解離の診断が困難であった.またMDCTの利点を活かしてSMAを中心に血管像を再構築することで病変をより鮮明に描出することができた.診断後,3例で血管造影下にステント留置を行い,残りの8例は保存的治療が選択されていた.すべての症例で治療経過は良好であった.【結論】急性腹症の鑑別診断には」SMA解離も念頭におき2 phaseの造影CT検査を行うことが必須と考えられた.
索引用語 上腸間膜動脈, CT