抄録 |
超音波診断は高い空間分解能より小結節の早期存在診断ならびに進展度診断が可能となる.超音波内視鏡が必要とされることも多いが,まず行う検査として体外式の優位性があるのは異論のないところである.病理診断にてT1,T2膵癌と確認できた体外式超音波(US)B-mode,造影超音波,造影CTとの存在診断能の比較では,それぞれ,80%(12/15結節), 100%(15/15結節),53.3%(8/15結節)である.この他に,PET-CTやMRI拡散強調画像の小さな膵癌の存在診断能のついても当院データと対比し,さらには文献的な現状を報告する.USで客観的表現が困難な場合がある.一方,造影CTが客観的表現像として膵癌の進展度診断に大きく寄与している.切除例における当科のMDCT進展度診断能の検討では脈管侵襲正診率は9割を超え他報告と同様であり,ほぼ確立されている.この膵癌進展度診断CT時代において,体外式超音波(US)診断がどのように寄与するか検討した.門脈系静脈(PV)浸潤の術前前向き診断能を造影CT単独の診断能と比較し,診断一致率やUSの診断能上乗せ効果があるのか41症例で検討した結果,造影CT診断した後のUS診断能は,陽性的中率100%,陰性的中率91%だった.一方,造影CTの単独では,陽性的中率55%,陰性的中率96%だった.病理で浸潤があった4例や明らかに浸潤のない19例においてUSとCTは全て一致したが,門脈と腫瘤が1/2周未満で接している場合には16例中9例で不一致となった.環周率に関してはCTに,微小門脈突出診断に関してはUSに優位性があった.膵癌進展度診断能に関しては課題が残り,前方後方進展に関しては随伴膵炎を所見とすることも多く偽陽性率が高くなる傾向にある.十二指腸進展やリンパ節転移診断は微小な進展を見逃し偽陰性率が高くなる傾向にある.神経叢進展の画像診断は事実上不可であり,他モダリティを含めた今後の検討が待たれる.上記MDCTの進展度診断能について述べる.実際,膵癌の診断には超音波内視鏡,膵管造影やEUS-FNAも含めて多モダリティでの横断的な精査が必要である.以上,USや造影CTの膵癌診療における役割について述べ,USの位置付けの再認識の一助としたい. |