セッション情報 一般演題(研修医(卒後2年迄))

タイトル

腹水の出現を契機に診断された特発性胆嚢穿孔の一症例

演者 渡部 真裕子(日鋼記念病院 消化器センター)
共同演者 佐藤 雄太(日鋼記念病院 消化器センター), 神山 勇太(日鋼記念病院 消化器センター), 根間 洋明(日鋼記念病院 消化器センター), 横山 和典(日鋼記念病院 消化器センター), 蔵谷 勇樹(日鋼記念病院 消化器センター), 舩越 徹(日鋼記念病院 消化器センター), 喜納 政哉(日鋼記念病院 消化器センター), 高田 譲二(日鋼記念病院 消化器センター), 浜田 弘巳(日鋼記念病院 消化器センター), 藤岡 保範(日鋼記念病院 病理診断科)
抄録 急性胆嚢炎に合併する穿孔の頻度は2%~15%と報告され、その局所合併症である胆汁性腹膜炎や胆嚢周囲膿瘍を併発した場合には重症胆嚢炎と診断し、緊急胆嚢摘出術の適応とされる。今回我々は、無痛性の腹水の出現を契機に診断された特発性胆嚢穿孔の一症例を経験したので報告する。症例は69歳、男性。下腹部痛と下痢、嘔吐を自覚し、前医に入院してMEPMを5日間投与された。症状は軽快したが、初診時には認めなかった腹水を肝周囲に認めるようになったために第6病日に当科に紹介となった。初診時の血液検査では白血球増多はなく、胆汁うっ滞型の生化学検査異常を認めた。腹痛を認めなかった。CTでは胆嚢には結石を認めず、体部から底部に壁肥厚を認めた。第12病日のCTでは腹水が増大し肝臓を凸レンズ状に圧排しており、肝被膜下の液体貯留と診断したが、その原因は特定できなかった。第20病日に試験穿刺を施行して暗赤色の漿液性腹水を認め、赤血球多数、蛋白 2.0g/dL、T-bil 6.7mg/dL、LDH 767U/Lと胆汁の漏出を疑った。各種画像診断では肝損傷や腫瘍を認めず、DIC-CTでも造影剤の漏出は認めなかった。EUSでは胆嚢壁肥厚が体部から底部にかけて増大し、液体貯留部に接していた。以上から特発性胆嚢穿孔による無症候性胆汁性腹膜炎と診断し、第31病日に肝被膜下ドレナージを施行した。その後液体貯留と排液は消失したが、確定診断を目的に第59病日に胆嚢摘出術を施行した。病理組織学的には胆嚢粘膜には著変を認めず、底部の漿膜下層の壊死と胆汁をまじえた化膿性滲出物を全層に認め、壊死性胆嚢炎による特発性胆嚢穿孔と診断した。特発性胆嚢穿孔は背景胆嚢に炎症や結石を伴わずに発症するまれな疾患であり、本例では発症当初の腹痛以外に特有な所見を認めなかったために術前診断に難渋した。
索引用語 特発性胆嚢穿孔, 腹水