セッション情報 ワークショップ13(消化器内視鏡学会・消化器病学会・消化器外科学会合同)

高齢者上部消化管出血における止血治療戦略-静脈瘤を除く

タイトル 内W13-14:

後期高齢者の上部消化管出血(非静脈瘤性)における治療戦略

演者 畑 英行(杏林大付属病院・3内科)
共同演者 土岐 真朗(杏林大付属病院・3内科), 高橋 信一(杏林大付属病院・3内科)
抄録 【目的】高齢化社会を迎え,高齢者上部消化管出血(非静脈瘤性)が増加しているが,再出血率の軽減、死亡率の低下のために、どのような治療戦略をたてるかが大きな課題となっている.今回我々は75歳以上の後期高齢者の上部消化管出血症例の臨床的特徴を明らかにし,治療成績向上を目的とした治療戦略について検討した.【方法】2004年9月から2011年12月までに非静脈瘤性上部消化管出血に対し内視鏡止血術を施行した407例につき,75歳以上の後期高齢者を高齢者群(146例,平均年齢81±5歳),75歳未満の非後期高齢者を非高齢者群(261例,平均年齢58±11歳)に分け,両群間で治療成績および基礎疾患,NSAIDs,抗凝固薬併用の有無,来院時Hbおよび血清Alb,6単位以上の輸血の有無,再出血率,死亡率,内視鏡的止血困難例の頻度,術中動脈酸素飽和度の低下率などにつき比較検討した.【結果】再出血率,死亡率,NSAIDs内服の有無,6単位以上の輸血を要した頻度で両群間に差はなかった.しかし,高齢者群では,基礎疾患が多く,抗凝固療法施行中の症例が多かった(p<0.01).また,来院時のHb,Albは低く(p<0.01),止血困難例が多かった(p=0.04).止血困難例の疾患内訳では,高齢者群に悪性腫瘍,十二指腸下行部以深の病変が多かった.止血困難例にはIVRを施行し,止血可能であった.また,緊急内視鏡検査中の動脈酸素飽和度の低下は高齢者がより高頻度であった.【結語】後期高齢者では基礎疾患の合併率が高く,高度の貧血,低栄養状態を伴うことが多く,主要臓器の潜在的機能低下が推測されることから,酸素供給を行い各種モニター下での慎重な内視鏡止血術が求められる.さらに高齢者での止血困難例は悪性腫瘍や十二指腸下行部以深といった内視鏡止血困難な部位や病変が多く,内視鏡治療に固執することなく,機を逸せずにIVRを迅速,積極的に進めていくことが治療成績向上に寄与すると考えられた.
索引用語 消化管出血, 高齢者