セッション情報 シンポジウム2 「肝胆膵疾患における画像診断の進歩」

タイトル

肝弾性度の解釈と臨床応用

演者 古家 乾(北海道社会保険病院 消化器センター 消化器内科)
共同演者 馬場 英(北海道社会保険病院 消化器センター 消化器内科), 定岡 邦昌(北海道社会保険病院 消化器センター 消化器内科), 小泉 忠史(北海道社会保険病院 消化器センター 消化器内科), 関谷 千尋(北海道社会保険病院 消化器センター 消化器内科)
抄録 FibroScanはフランスで開発された肝の弾性度を直接測定する装置である.肝の線維化を測定するGold Standardはもちろん肝生検であるが,その浸襲性による合併症,サンプルエラー,病理診断医の不一致性などが指摘されていた.血小板数,生化学的線維化マーカー,さらに各種のインデックス(APRIなど)がその代表例だがが,線維化を直接測定してはいないため限界がある.当センターでは2005年の秋からこのFibroScanを導入し,これまでのべ1万5000人を超える症例に対して測定を行ってきた.弾性度の測定原理は,低周波のせん断波を肝臓に伝播させ,そのゆがみを超音波で画像化し,そのせん断波の伝播速度から肝臓の固さをヤング率を用いて算出する.この測定原理からすると肝弾性度=肝の硬さ(stiffness)である.肝弾性度は線維化を強く反映するが,線維化以外にも影響する因子が存在し,炎症細胞浸潤、浮腫、脂肪化 ,閉塞性黄疸,うっ血などを考慮する必要がある.我々は,まず日本人の肝弾性度の正常値を設定し,さらに検診例における非アルコール性脂肪性肝障害やアルコール性肝障害のハイリスクグループの抽出を試みた.もちろん,ウイルス性慢性肝炎や自己免疫性肝炎などの線維化ステージ推定にも役立つが,そのほか急性肝炎やうっ血肝,閉塞性黄疸などでも弾性度が上昇する.しかし,その変化は数時間から数日で変化する.また透析患者の肝炎では,AST/ALTが低値を示し,肝炎の活動性や進展度を低めに評価されるが,このような状態でも評価可能である.従って,肝弾性度が背景肝疾患により線維化以外の様々な病態を反映しており,逆に言えばこれが線維化ステージの低い群での肝生検との不一致性につながる.このような背景を理解すれば,fibrosisとは独立してLiver stiffnessの臨床応用範囲が広がってくる.2011年2月に本邦で保険適応が認められたが,道内での使用経験は少ないと思われ,肝弾性度の解釈と臨床応用について,当センターでの経験とreviewを含めて紹介する.
索引用語 肝繊維化, 肝弾性度