セッション情報 一般演題

タイトル

肝内胆管から肝外胆管へ発育を来したmucinous cystic neoplasmの1切除例

演者 佐藤 大介(北海道大学病院 消化器外科II)
共同演者 松本 譲(北海道大学病院 消化器外科II), 大森 優子(北海道大学病院 病理部), 三橋 智子(北海道大学病院 病理部), 佐藤 暢人(北海道大学病院 消化器外科II), 倉島 庸(北海道大学病院 消化器外科II), 海老原 祐磨(北海道大学病院 消化器外科II), 田本 英司(北海道大学病院 消化器外科II), 村上 壮一(北海道大学病院 消化器外科II), 中村 透(北海道大学病院 消化器外科II), 土川 貴裕(北海道大学病院 消化器外科II), 七戸 俊明(北海道大学病院 消化器外科II), 田中 栄一(北海道大学病院 消化器外科II), 平野 聡(北海道大学病院 消化器外科II)
抄録 症例は49 歳,女性.嘔吐を主訴に近医を受診した.血液生化学検査で肝胆道系酵素の上昇,CTで肝内胆管の拡張を指摘され,肝門部胆管癌の疑いで当院消化器内科紹介となった.当院精査の結果,肝S4,S6の隔壁を伴った嚢胞性病変と,肝門部胆管の圧排性狭窄を指摘された.腫瘍性の嚢胞性病変と考えられたが,末梢性であり術前確定診断は困難と思われた.肝内胆管嚢胞腺腫との診断で前医初診より1ヶ月後,手術目的に当科紹介となり,肝左葉尾状葉切除・肝外胆管切除が施行された.切除検体は肉眼的に,B4合流部付近から胆管に沿って肝内側区およびBc,Bsの肝外胆管に進展する多房性嚢胞性病変が認められた.病理組織学的に嚢胞は胆管上皮類似の粘液産生性上皮に裏打ちされ,卵巣型間質を有しており,Mucinous cystic neoplasm (MCN)と診断した.術後は特に問題なく経過し,術後25日で当科退院となった.
胆道MCNは2010年のWHO分類で膵MCNのcounter partとして新たに整理・導入された疾患概念である.従来,胆管粘液性嚢胞性腺腫,腺癌とされてきた疾患群に含まれるが,Intraductal papillary neoplasm (IPNB)と混同されてきた.画像的にも両者の鑑別は難しいが,MCNは 腫瘍壁の卵巣型間質の存在と,通常胆管との交通を認めないことが特徴である.稀な腫瘍であり,その中でも肝外胆管病変を認めることは少ない.肝内を越えて肝外胆管に広がる 症例はこれまでに本邦で報告はない.
非常に稀な肝内外胆管に広がるMCNを経験した.胆道系嚢胞疾患の疾患概念・分類は必ずしも明確ではなく ,その臨床病理学的特徴を考察する上で重要な症例と思われ,報告した.
索引用語 胆道, MCN