セッション情報 一般演題(専修医(卒後3-5年))

タイトル

広範な腹膜播種を伴った肝外発育型肝細胞癌の1例

演者 永井 一正(手稲渓仁会病院消化器病センター)
共同演者 辻 邦彦(手稲渓仁会病院消化器病センター), 山崎 大(手稲渓仁会病院消化器病センター), 松居  剛志(手稲渓仁会病院消化器病センター), 姜  貞憲(手稲渓仁会病院消化器病センター), 桜井  康雄(手稲渓仁会病院消化器病センター), 児玉  芳尚(手稲渓仁会病院消化器病センター), 真口  宏介(手稲渓仁会病院消化器病センター)
抄録 【背景】肝外発育型の肝細胞癌(以下、HCC)はHCC全体の0.2~3.0%と比較的まれである。一方、HCCの腹膜播種も頻度は少なく、破裂後や医原性あるいは末期にみられる病態である。今回、未治療の初発時に極めて広範囲に高度の腹膜播種を伴ったHCCの 1例を経験したので報告する。【症例】60歳代男性。2012年9月、検診で胃の壁外性圧排所見を指摘され前医を受診。腹部USにて胃近傍に5cm大の腫瘤性病変を認めたため、精査目的に当センター紹介となる。入院時血液検査で肝機能はAST 43U/l、ALT 58U/l、肝炎ウイルスマーカーはHBsAg、HCV抗体ともに 陰性であり、腫瘍マーカーはAFPが213000ng/ml、PIVKA-IIが75000mAU/mlと異常高値であった。腹部US検査では肝左葉と胃の間に6cm大の不整な低エコー腫瘤像を認め、造影US検査で同病変は血管相で辺縁から全体に濃染し、後血管相でdefectを呈した。腹部CT検査でも、横隔膜直下に肝外側区と接して6cm大の腫瘤を認め、動脈相で強く濃染し平衡相でwash outされる多血性の病変であった。さらに上腹部から下腹部の腹膜には、強く濃染される結節性病変が広範に認められた。腫瘍の発生部位を診断するために腹部血管造影を施行したところ、同病変は左肝動脈A2が支配動脈であり、肝外側区から発育したHCCと広範な腹膜播種と考えられた。診断確定の目的で審査腹腔鏡検査を施行したところ肝外側区より突出するHCCを認め、腹腔内には広汎な腹膜播種巣がみられた。同部位からの生検の結果、HE染色では腫大した核と豊富な細胞質を有する異型細胞がシート状に配列し、細胞間の間質成分は少なく、細い血管網を伴い、HCCに矛盾のない所見が認められた。以上より、広範な腹膜播種を伴った肝外発育型のHCCと診断し、肝内病変に対してはTACEを施行、腹膜播種にはSorafenibの投与を開始した。治療開始後、8か月が経過した現在、Sorafenibは投与継続中である。【まとめ】広範な腹膜播種を認めた肝外発育型HCCの1例を経験した。まれな症例であり腹腔鏡所見を合わせて報告する。
索引用語 肝細胞癌, 腹膜播種