セッション情報 シンポジウム2 「肝胆膵疾患における画像診断の進歩」

タイトル

Gd-EOB-DTPA造影MRIの肝細胞相で低信号を呈する乏血性結節の自然経過に関する検討

演者 永井 一正(手稲渓仁会病院 消化器病センター)
共同演者 辻 邦彦(手稲渓仁会病院 消化器病センター), 山崎 大(手稲渓仁会病院 消化器病センター), 松居  剛志(手稲渓仁会病院 消化器病センター), 姜  貞憲(手稲渓仁会病院 消化器病センター)
抄録 【背景】Gd-EOB-DTPA造影MRI検査(以下、EOB-MRI)は、肝細胞癌(以下、肝癌)の拾い上げに有用な検査法として普及している。しかし、EOB-MRI肝細胞相で低信号を呈する乏血性結節の自然経過は未だ明らかではなく、治療の時期や適応についても一定の見解がない。【目的】EOB-MRI肝細胞相で低信号を呈する乏血性結節の自然経過について検討した。【対象と方法】2008年3月から2012年12月までの期間に当院でEOB-MRIを施行した1706例中、EOB-MRI肝細胞相で低信号を呈する乏血性結節を認め、2回以上のEOB-MRI検査で経過観察し得た129例を対象とした。多血化については造影MRI、造影CT、血管造影下CT、造影超音波のいずれかのmodalityで判定し、多血化した時点で観察終了とした。【検討項目】1)臨床背景、2)累積多血化率、3)多血化までの期間、4)多血化に関与する要因。なお経過中に3mm以上増大した結節を「増大」と定義した。【結果】1)年齢の中央値は71歳、成因はHBV18例、HCV86例、アルコール12例、その他13例。観察期間中央値は679日(87~1737日)。2)累積多血化率は12か月14.2%、24ヶ月 27.1%。3)多血化までの期間の中央値は352日。4)多血化に寄与する要因としては、結節径の増大と過去に肝細胞癌の治療歴が有ることが多血化に関与する有意な因子として認められた(P<0.05)。さらに多血化に寄与する要因に関して、肝細胞癌治療歴のある群(74結節:既治療群)とない群(55結節:未治療群)に分けて比較検討した。未治療群では結節径の増大が多血化に関与する傾向が認められたが、有意差はなく、既治療群ではAFPが10ng/ml以上および結節径の増大が多血化の有意な因子として認められた。既治療群で多血化に寄与する因子について多変量解析を施行したところ、結節径の増大がオッズ比:9.74(95%信頼区間:2.59-36.58,P=0.00075で独立した要因であった。【結語】EOB-MRI肝細胞相で低信号を呈する乏血性結節において、肝細胞癌治療歴のある結節は多血化しやすく、特に増大傾向にある結節に対しては厳重な経過観察が必要であると考えられた。
索引用語 肝細胞癌, EOB-MRI