セッション情報 一般演題

タイトル

術前診断が困難であった早期胃癌の一例

演者 小泉 忠史(北海道社会保険病院 消化器センター)
共同演者 馬場 英(北海道社会保険病院 消化器センター), 定岡 邦昌(北海道社会保険病院 消化器センター), 古家 乾(北海道社会保険病院 消化器センター), 関谷 千尋(北海道社会保険病院 消化器センター), 服部 淳夫(北海道社会保険病院 病理)
抄録 症例は70歳代男性。2006年7月に便潜血陽性を指摘され当科外来を初診した。CS,CT検査により直腸癌の診断で当院外科にて同月に低位前方切除術を施行した。その際の上部消化管内視鏡検査にてHP陽性の胃潰瘍を認め,同月に除菌治療を施行した。一時除菌は失敗し2007年8月に二次除菌を施行した。2008年8月にUBT陰性を確認した。以後定期的に内視鏡検査を行うも同じ部位に難治性の潰瘍を認めPPI内服を継続していた。潰瘍部より生検を行うも数回にわたりGroup2が検出されるため,完全生検目的にESDを施行する方針とした。2013年3月に施行した上部消化管内視鏡検査では前庭部小弯にS1 stageの潰瘍を認めており拡大内視鏡観察では明らかな血管異型は認めなかったが,軽度の構造異型を認めた。EUSでは胃癌と考えても進達度はMと考えられた。胸腹部造影CT検査では周囲リンパ節腫脹や多臓器転移は認めなかった。2013年5月にESD目的に当科入院となった。入院時現症では下腹部正中に手術痕を認めるも他に特記すべき所見は認めなかった。血液検査では腫瘍マーカーを含め特記すべき所見は認めなかった。第2病日にESDを施行した。経過は良好で,病理結果を待ち第10病日に退院となった。病理ではwell differentiated tubular adenocarcinoma,0-IIb+IIc,M,ly0,v0,HM0.7mm,VM0.7mm,R0,p53(++),Ki67(+)であり早期胃癌の確定診断となった。2010年に変更された組織生検診断のGroup分類では,Group2は「腫瘍性か非腫瘍性か判断の困難な病変」とされており,原因としては組織量が不十分,またはびらんや炎症が強い,また,病理組織の挫滅や障害が強いことが挙げられている。 生検結果がGroup2の場合は免疫染色や完全生検目的のESDなどを検討することが望ましいと考えられる。今回拡大観察を含めた内視鏡検査やHE染色では確定診断に至らなかったが,複数回の生検でGroup2が認められていたため,完全生検目的にESDを施行した結果早期胃癌であった一例を経験したので報告する。
索引用語 早期胃癌, Group分類