セッション情報 一般演題

タイトル

上部内視鏡検査中に発生した脳空気塞栓の1例

演者 中嶋 駿介(旭川医科大学 内科学講座 消化器血液腫瘍制御内科学分野)
共同演者 斉藤 裕輔(市立旭川病院 消化器病センター), 杉山 隆治(市立旭川病院 消化器病センター), 中村 和正(市立旭川病院 消化器病センター), 鈴木 聡(市立旭川病院 消化器病センター), 助川 隆士(市立旭川病院 消化器病センター), 小澤 賢一郎(市立旭川病院 消化器病センター), 千葉 篤(市立旭川病院 消化器病センター), 垂石 正樹(市立旭川病院 消化器病センター)
抄録 【はじめに】本邦では上部内視鏡検査における偶発症の発生は稀である.さらに偶発症として生じた脳の空気塞栓の報告は世界で28例(本邦6例,海外22例)認めるのみと極めて稀である.今回内視鏡検査中に脳空気塞栓を生じた1例を経験したため,文献的考察を踏まえて報告する.
【症例】60歳代男性.2012年10月総胆管結石のため入院し,内視鏡的乳頭切開術(EST)により排石した.入院中の超音波内視鏡(EUS)時の食道観察でまだら食道を認め,11月に食道病変精査目的に来院した.検査は通常の方法で行い,胃・十二指腸の観察後に食道病変の精査(通常観察→NBI観察→色素法)を行った.ルゴール散布後に嘔吐反射を誘発し,下部食道に裂創を認め,同部位から出血を認めた.内視鏡的止血処置中に意識レベルが低下し,右側への共同偏視を認めた.直ちに検査を中断し全身状態を安定させてから頭部CT,MRIを撮影したところ,右中大脳動脈領域を中心に空気塞栓を認めた.脳神経外科のある病院に搬送し,搬送後右脳浮腫およびMidline shiftが出現した.同日緊急で頭蓋骨開放および右脳部分切除を行ったが2日後に再び脳浮腫が増悪し再度開頭減圧術を行った.その後全身状態は安定し,左半身麻痺はあるがリハビリを継続している.
【考察】内視鏡検査に伴う空気塞栓は極めて稀であるが,発症すると重篤な転機を辿る場合が多く本邦報告の6例中5例が死亡している.内視鏡検査中は送気による圧勾配が生じ,血管内に空気が流入しやすい状況にある.静脈内に入った空気が肺の毛細血管網を抜け,もしくは何らかのシャントにより動脈系に流入し発症すると考えられるが,明確な機序は不明である.極めて稀で予測困難であるが,内視鏡検査・治療時に発生しうる重大な偶発症であることを知っておくべきである.また,内視鏡検査中に重篤な循環呼吸器系または神経系の症状を呈する患者において空気塞栓についても考慮すべきである.
索引用語 偶発症, 空気塞栓