セッション情報 一般演題

タイトル

膵炎をきたした膵体部動静脈奇形に対し尾側膵切除を施行した1例

演者 松薗 絵美(札幌厚生病院 第2消化器内科)
共同演者 長川 達也(札幌厚生病院 第2消化器内科), 北川 翔(札幌厚生病院 第2消化器内科), 奥 大樹(札幌厚生病院 第2消化器内科), 岡村 圭也(札幌厚生病院 第2消化器内科), 平山 敦(札幌厚生病院 第2消化器内科), 宮川 宏之(札幌厚生病院 第2消化器内科), 田中 栄一(北海道大学病院 消化器外科II), 平野 聡(北海道大学病院 消化器外科II)
抄録 【はじめに】膵動静脈奇形(arteriovenous malformation:以下AVM)は画像診断技術の進歩に伴い報告例は増加しているが、比較的稀な疾患とされている。膵炎や消化管出血をきたした報告もあり、有症状例は治療適応とされている。今回我々は膵炎、仮性嚢胞形成を伴発した膵体部AVMに対し、尾側膵切除を行った1例を経験したので報告する。【症例】60歳男性。上腹部痛にて前医受診。CTにて膵体部腫大、膵管拡張を認め、精査目的に当科紹介となる。造影CTでは、膵体部を中心に動脈相で濃染する多数の脈管構造を認め、門脈系血管が早期に造影された。また、膵体部病変と近接して仮性嚢胞形成を認め、膵周囲脂肪織の濃度上昇を伴っていた。腹部MRIでは、腫大した膵体部にflow voidを多数認めた。腹部超音波検査、超音波内視鏡検査では、膵体部実質内に不規則な嚢状の管腔構造を認め、カラードプラ画像では管腔内にモザイク状の血流シグナルを検出した。また、FFT(Fast Fourier Transform)解析では、病変内部に高速の拍動流が検出され、門脈系血管の拍動化が顕著であった。造影超音波検査では、造影早期から管腔内へ急速にbubbleが流入し、近接する低エコー領域は造影不良であった。腹部血管造影検査では、背側膵動脈を主とし、脾動脈、上腸間膜動脈、胃十二指腸動脈、左胃動脈など複数の動脈を供血路とする異常血管の集合体を膵体部に認めた。また、動脈相早期に門脈系血管が描出され、動脈―門脈シャントが確認された。以上の画像所見及び血行動態から膵体部AVMと診断された。膵体部で血流低下所見を認め、動脈―門脈シャントに伴う盗血による虚血性膵炎の合併が腹痛の原因と考えられ、尾側膵切除を施行した。術後病理でも膵AVMと虚血性膵炎の変化を認めた。【考察】特徴的な画像所見を呈した膵AVMの1例を経験した。カラードプラおよび造影超音波検査は、生理的血行動態を比較的低侵襲で観察可能であり、本症例の病態の把握に有用であった。
索引用語 膵動静脈奇形, 画像診断