セッション情報 一般演題(専修医(卒後3-5年))

タイトル 042:

脳症状で発症した大腸癌孤立性脳転移の一例

演者 伊志嶺 優(市立小樽病院 消化器内科)
共同演者 後藤 啓(市立小樽病院 消化器内科), 内藤 崇史(市立小樽病院 消化器内科), 矢花 崇(市立小樽病院 消化器内科), 安達 雄哉(市立小樽病院 消化器内科), 近藤 吉宏(市立小樽病院 消化器内科), 平田 翔(市立小樽病院 消化器内科), 笠井 潔(市立小樽病院 検査科病理)
抄録 【症例】75歳、女性。【主訴】下肢のつまずき。【現病歴】平成25年5月下旬よりつまずきが出現。6月○日(第1病日)、近医脳外科受診。左不全麻痺、KPS 90%。右前頭葉に13 mmの腫瘤性病変を認めた。全身CTでは上行結腸の壁肥厚のみ指摘。第2病日に開頭腫瘍摘出術を施行。中分化管状腺癌、CK7 (-)、CK20 (+)、CDX2 (+)、転移性脳腫瘍、原発は大腸癌が疑われた。第6病日に精査加療目的に当院初診となる。大腸内視鏡では上行結腸に全周性の2型腫瘤を認めた(高分化管状腺癌)。他部位に転移は認められず、第20病日に腹腔鏡下右半結腸切除術を施行。高分化管状腺癌、T3、ly2、v3、N0 (0/23)、KRAS変異あり。第42病日のFDG-PET/CTでは左甲状腺後面に8 mm大の集積のみを認めた。第58病日の頭部MRIにて腫瘍摘出部位に10 mm大の再発が疑われた。また左上腕に腫瘤を自覚、生検では腺癌であった。脳転移局所制御について、セカンドオピーニオンをふまえ、第98病日に再び開頭腫瘍摘出術を施行。第121病日より全脳照射(35 Gy)、また左上腕皮膚転移の疼痛緩和目的に第128病日より照射(30 Gy)を開始した。照射終了後には左頸部リンパ節、両側副腎、両側腎、傍大動脈リンパ節に転移を認め、KPS 30%であった。その後はBSCが行われた。【考察】転移性脳腫瘍は一般には晩期合併症であり、肺・肝などの他臓器転移併存例がほとんどであり、本症例はまれと考えられる。転移性脳腫瘍の治療は、その特殊性から、脳局所と頭蓋外病変に分けて考えられている。脳局所制御は手術、定位放射線照射、全脳照射の組み合わせ、また頭蓋外病変の治療は全身化学療法が中心となる。転移性大腸癌の予後は化学療法の進歩、また肝・肺転移合併切除により大きく改善している。大腸癌脳転移においても化学療法による予後の改善が示唆されている。しかしこれは頭蓋外病変の制御に関連するものと思われる。本症例では早期の脳転移再発により治療は困難であった。大腸癌脳転移の治療を考える上で興味ある一例と思われた。
索引用語 大腸癌, 脳転移