セッション情報 一般演題

タイトル 078:

新たな診断基準に拠る急性肝不全の成因とその変遷

演者 姜 貞憲(手稲渓仁会病院・消化器病センター)
共同演者 松居 剛志(手稲渓仁会病院・消化器病センター), 山崎 大(手稲渓仁会病院・消化器病センター), 永井 一正(手稲渓仁会病院・消化器病センター), 辻 邦彦(手稲渓仁会病院・消化器病センター), 児玉 芳尚(手稲渓仁会病院・消化器病センター), 桜井 康雄(手稲渓仁会病院・消化器病センター), 真口 宏介(手稲渓仁会病院・消化器病センター)
抄録 【背景と目的】1981年犬山シンポジウムによる急性肝炎重症型、劇症肝炎の診断基準に代わり2011年、急性肝不全(ALF)の新たな診断基準が提唱された。自験ALF例に対し新たな成因分類を試み、その変遷を解明することにより、治療成績向上の展望を探ることを目的とした。【対象と方法】1998年から2013年10月迄に診療した急性肝障害にALFの診断基準(PT活性≦40%又はPTINR>1.5、他)を適用し成因別に分類し、さらに前期(98-04年)と後期(05-13年)における成因の推移を検討した。【成績】1) 16年間に診療したALFは110例(女56例、年齢中央値48.5 [16-86] 歳)で、そのうち昏睡型は49例であった。ALFの成因は、肝炎virus55例(50%)、循環障害13(12%), AIH 10(9%)、薬物性8(7%)、代謝性4(4%)、悪性腫瘍肝浸潤2(2%)および成因不明18(16%)であった。2)前期(n=52)/ 後期(n=58)別の成因は肝炎virus34例(65%)/ 21例(36%) 、循環障害7(13%)/6(10%), AIH 2 (4%)/8(14%)、薬物性4(8%)/4(7%)、代謝性0/4(7%)、悪性腫瘍0/2/(3%)、成因不明7(13%)/ 11(19%)であり、後期では肝炎virusが減少、AIHが増加した (p<0.05)。昏睡型ALFの前期(n=22)/ 後期(n=27)別成因は、肝炎virus 15例 (68%)/8例(30%)、循環障害1(5%)/0、AIH 0/7(26%)、薬物性3(14%)/2(7%)、代謝性0/3(11%)、悪性腫瘍0/2(7%)、成因不明3(14%)/5(19%)であり、昏睡合併例においてvirus減少、AIH増加はさらに明瞭であった(p<0.05)。昏睡型における肝炎virusは、前期ではHBV 13、HEV 2 、後期ではHBV5 (再活性化4) 例、HEV2、HCV1であり、HBVが減少した。昏睡型代謝性ALFはOTC欠損、甲状腺中毒、Wilson病であった。【考案と結語】ALFでは、全体でも、或は昏睡型に限っても、肝炎virus、特にHBVは主要な成因と言えども減少傾向であった。一方、AIHは増加し、代謝性が新たに浮上した。昏睡型ALFの救命率向上には急性発症様AIHの診断が重要である。代謝性ALFの診療は臨床上の新たな挑戦的課題である。
索引用語 急性肝不全, 昏睡型