セッション情報 一般演題(研修医(卒後2年迄))

タイトル 150:

積極的に化学療法を行い3度にわたりDICから離脱しえた胃癌骨髄癌症の1例

演者 中野 真太郎(北海道大学病院 卒後臨床研修センター)
共同演者 小松  嘉人(北海道大学病院 腫瘍センター), 原田  一顕(北海道大学病院 消化器内科), 小林 良充(北海道大学病院 消化器内科), 佐々木 尚英(北海道大学病院 消化器内科), 福島  拓(北海道大学病院 腫瘍センター), 結城 敏志(北海道大学病院 消化器内科), 坂本 直哉(北海道大学病院 消化器内科)
抄録 症例は50代女性。食後の心窩部痛と体重減少を主訴に近医を受診した。上部消化管内視鏡検査にて胃体上部~体下部にかけて4型腫瘍を認め、生検結果はpor-sigであった。腹部造影CTでは傍大動脈リンパ節転移と腹膜播種を認め、切除不能進行胃癌と判断され、全身化学療法目的に当科紹介となった。HER2が陰性であったことから、治療レジメンはS-1+Cisplatin (CDDP)療法を選択した。S-1開始後、Day 7に6.2万/μLへの血小板数減少を認め、CDDP投与は行わず、S-1を休薬した。Day 12に血小板数の改善を認め、S-1を減量の上で再回したが、Day 18には2.9万/μLへの血小板数低下を認め、また、血液検査にて凝固線溶系の異常と全身倦怠感が出現し、緊急入院となった。骨髄穿刺を行い、骨髄への腫瘍細胞の浸潤を認めたため、胃癌の骨髄癌症による播種性血管内凝固症候群(DIC)と診断した。DICの治療には化学療法が必要と判断し、急速静注5-FU+l-LV(RPMI)療法を開始した。同療法開始により速やかにDICからの離脱と全身状態の改善を認め、Day 25以降は外来管理となった。以後は、血小板数、凝固線溶系マーカーと全身状態も参考として治療効果判定を行ない、その増悪の際には、画像所見による増悪を伴わなくとも治療を変更した。二次治療にはweekly Paclitaxel療法、三次治療にはIrinotecan+CDDP療法を施行し、いずれにおいてもレジメン変更後にDICからの離脱が可能であった。Irinotecan+CDDP療法開始後Day 49に、DICの再増悪、全身倦怠感を認め、当科入院となった。この時点で有効な抗癌剤は使い切っており、以後はBest Supportive Careを行い、入院後10日目に永眠された。胃癌の骨髄癌症に起因するDICは発症と進行が急激で、予後は平均2-3ヶ月ときわめて不良である。診断時点で既に全身状態不良であることも少なくないが、化学療法により胃癌の病勢を制御することはDICのコントロールに際しても重要である。今回、我々は積極的に化学療法を行い三度にわたりDICから離脱しえた胃癌骨髄癌症の1例を経験したため、報告する。
索引用語 DIC, 胃癌