セッション情報 一般演題

タイトル 073:

血液透析下で施行される上下部内視鏡治療の注意点

演者 松本 美櫻(北海道大学病院 消化器内科)
共同演者 津田 桃子(北海道大学病院 消化器内科), 大野 正芳(北海道大学病院 消化器内科), 大森 沙織(北海道大学病院 消化器内科), 高橋 正和(北海道大学病院 消化器内科), 吉田 武史(北海道大学病院 消化器内科), 森 康明(北海道大学病院 消化器内科), 山本 純司(北海道大学病院 消化器内科), 中川 学(中川胃腸科), 小野 尚子(北海道大学病院 光学医療診療部), 中川 宗一(中川胃腸科), 間部 克裕(北海道大学病院 光学医療診療部), 清水 勇一(北海道大学病院 消化器内科), 加藤 元嗣(北海道大学病院 光学医療診療部), 坂本 直哉(北海道大学病院 消化器内科)
抄録 【背景・目的】
現在日本では人工血液透析患者は年々増加しており、その内視鏡治療の機会も増加している。今回我々は人工血液透析下での上下部内視鏡治療における相違点について検討した。
【方法】
当院及び同意を得られた全国の施設に対し、2009年~2011年の間、人工血液透析下に行った上部消化管の治療内視鏡(胃EMR、胃ESD)、下部消化管の治療内視鏡(大腸EMR/ポリペクトミー、大腸ESD)につき、後出血につき調査を行った。また、コントロール群として各施設の各手技の総数・後出血数についても調査を行った。回答を得られた施設はそれぞれ胃EMR6施設、胃ESD13施設、大腸EMR7施設、大腸ESD3施設であった。
【結果】
人工血液透析下に施行された治療内視鏡は、上部消化管では46例、下部消化管では67例であった。治療の内訳は上部消化管が胃EMR15例、胃ESD31例、大腸EMR64例、大腸ESD3例であり、上部消化管でESDの施行が多かったのに比し下部消化管ではほとんどがEMRであった。
後出血率は、上部消化管では透析群の出血率が23.9%、コントロール群が4.5%、下部では透析群が7.4%、コントロール群が1.4%であり、両者ともp<0.001と有意に透析群の出血率が高かった。出血例における手技の内訳は胃EMRが3例(20.0%)、胃ESDで8例(25.8%)、大腸EMRで6例(9.3%)であり、大腸ESDでの出血はなかった。
上部消化管、下部消化管それぞれにおいて出血群、非出血群間で出血に関わる因子について検討を行った。その結果、上部消化管では術後のメシル酸ナファモスタットによる透析の有無が、下部消化管では透析年数が多変量解析にて有意な因子であった。出血日の分布を検討すると、上部消化管において2週間以降の出血が2例あり、上部消化管の方が遅発性の出血が多い傾向にあった。
【考察】
 上部消化管内視鏡治療においてはESDによる処置が多く、切除後潰瘍の存在が遅発性出血につながったと思われ、交後出血予防にはメシル酸ナファモスタットによる透析が有用である可能性が示された。大腸EMRのような比較的低侵襲な処置においては、逐年の透析による全身性変化の関与が示唆された。
索引用語 人工血液透析, 後出血