セッション情報 一般演題(研修医(卒後2年迄))

タイトル 147:

散発性腸間膜デスモイドの臨床病理・分子学的検討

演者 柏木 智則(札幌医科大学 消化器・免疫・リウマチ内科)
共同演者 山下 健太郎(札幌医科大学 消化器・免疫・リウマチ内科), 村上 佳世(札幌医科大学 消化器・免疫・リウマチ内科), 小野寺 馨(札幌医科大学 消化器・免疫・リウマチ内科), 一色 裕之(札幌医科大学 消化器・免疫・リウマチ内科), 能正 勝彦(札幌医科大学 消化器・免疫・リウマチ内科), 山本 英一郎(札幌医科大学 消化器・免疫・リウマチ内科), 有村 佳昭(札幌医科大学 消化器・免疫・リウマチ内科), 篠村 恭久(札幌医科大学 消化器・免疫・リウマチ内科), 古畑 智久(札幌医科大学 消化器・総合、乳腺・内分泌外科), 平田 公一(札幌医科大学 消化器・総合、乳腺・内分泌外科), 長谷川 匡(札幌医科大学 臨床病理部)
抄録 【背景】デスモイド(desmoid tumor, aggressive fibromatosis)は四肢、体幹、腹腔内に好発する線維芽細胞由来の腫瘍で、全軟部腫瘍に占める割合が3%以下のまれな疾患である。発育は緩徐で遠隔転移はまれであるが、浸潤性発育様式のため腹腔内デスモイドは腸閉塞や尿路閉塞を来すことがあり、切除後再発がしばしば問題となる。家族性大腸腺腫症(FAP)に合併するデスモイドはAPCの変異が原因であるが、散発性デスモイドではbeta-catenin遺伝子 (CTNNB1)の高頻度な変異が報告されている。免疫組織学的には遺伝性・散発性いずれもbeta-cateninタンパクの核内発現が特徴的である。
【方法】当科で経験した散発性腸間膜デスモイド4例を対象に、臨床病理学的、免疫組織学的検討に加えCTNNB1 exon 3の変異をdirect sequence法で解析した。
【成績】年齢は21~74歳で男女2例ずつ、大腸ポリポーシスの既往も家族歴もないが、4例中3例が悪性腫瘍の既往を有した(メラノーマ、肺癌、胃癌)。CTでは径6~13cmの内部均一で造影効果のある腫瘍で、3例にPETを施行したがFDG集積は高度、軽度、なしと様々であった。術前に確診できた例はなく、GISTや悪性リンパ腫を疑い全例切除した。病理組織学的には4例とも異型に乏しい線維芽細胞と膠原線維の増殖からなる腫瘍で、免疫組織学的にはSMAとvimentinが陽性、KITとCD34は陰性、またbeta-cateninの核内発現が認められた。CTNNB1の変異解析では3例にcodon 41の、1例にcodon 45のmissense mutationを認めた。術後は無治療で1~7年が経過しているが、全例無再発で生存している。
【結論】散発性腸間膜デスモイドはFAPに合併するデスモイドに比べ画像診断が困難であったが、切除後の短期的な予後は良好でありCTNNB1の変異が高率に認められた。
索引用語 desmoid, beta-catenin