セッション情報 一般演題

タイトル 067:

突然の後腹膜出血による十二指腸コンパートメント症候群の1例

演者 奥 大樹(札幌厚生病院 第2消化器科 )
共同演者 宮川 宏之(札幌厚生病院 第2消化器科 ), 長川 達哉(札幌厚生病院 第2消化器科 ), 平山 敦(札幌厚生病院 第2消化器科 ), 岡村 圭也(札幌厚生病院 第2消化器科 ), 北川 翔(札幌厚生病院 第2消化器科 ), 松薗 絵美(札幌厚生病院 第2消化器科 )
抄録 症例は59歳女性,17年前に膵嚢胞性病変に対しての膵尾部切除術の既往がある.病理診断にて悪性は否定され,病変の再発も認めない.飲酒歴なし.2013年1月突然上腹部痛を自覚し近医にて施行した腹部CTにて,十二指腸水平脚周囲に最大径20cmの血腫を認め,当院に紹介された.翌日の採血でHbの低下を認めたため,出血が持続していると判断し血管造影を施行した.明らかな動脈瘤および出血点は描出されなかったものの,下膵十二指腸動脈(IPDA)の口径不同を認めたため,CT所見と合わせて,IPDAを出血の責任血管と判断してコイル塞栓術を施行し,術後は止血が得られた.出血原因としては結節性多発動脈炎等の疾患を疑わせる所見は無く,診断基準を満たさないがSegmental arterial mediolysis(SAM) の可能性が疑われた.術後3日目に上部消化管内視鏡検査を行い,十二指腸粘膜のうっ血による色調変化を認めたものの,スコープ通過は問題なく食事開始としたが,術後7日目に噴出性嘔吐が出現し,ガストログラフィンによる上部消化管造影で十二指腸狭窄を認めた.血腫の経時変化による硬化と,静脈閉塞からのうっ血による浮腫状変化が圧排狭窄の原因と考えられ,十二指腸コンパートメント症候群と診断した.高カロリー輸液,経鼻胃管留置にて保存的に加療し,術後30日後に消化管造影にて造影剤の通過を確認できたため,術後38日目より食事開始とした.以後通過障害を認めず術後49日目に退院となった.現在外来にて経過観察中であるが,退院後11ヶ月の時点での再発を認めていない.血腫による十二指腸コンパートメント症候群は保存的加療により,血腫が吸収され開通が得られることが多いとされている.本症例ではその臨床経過を詳細に追うことができたので,文献による考察を加えて報告する.
索引用語 十二指腸コンパートメント症候群, Segmental arterial mediolysis