セッション情報 一般演題(研修医(卒後2年迄))

タイトル 149:

胃転移を伴う食道悪性黒色腫の剖検例

演者 長尾 沙智子(KKR札幌医療センター 斗南病院 腫瘍内科)
共同演者 北山 浩光(KKR札幌医療センター 斗南病院 腫瘍内科), 平山 眞章(KKR札幌医療センター 斗南病院 腫瘍内科), 辻 靖(KKR札幌医療センター 斗南病院 腫瘍内科), 土井 綾子(同 消化器内科), 住吉 徹哉(同 消化器内科), 近藤 仁(同 消化器内科), 大森 優子(同 病理診断科), 小山田 ゆみ子(同 病理診断科)
抄録 悪性腫瘍の胃転移は稀であり,なかでも悪性黒色腫の胃転移は我々が調べ得た範囲では本邦で40数例の報告をみるのみである.今回胃転移を伴う食道原発悪性黒色腫の症例を経験したので報告する.【症例】59歳男性.【主訴】体重減少.【現病歴】6か月で5kgの体重減少を主訴に前医受診.上部消化管内視鏡検査で胃噴門部に黒色調の1型腫瘍を認め,生検で悪性黒色腫と診断された.当科紹介受診し,精査加療目的に入院となった.【検査所見】上部消化管内視鏡検査では胃噴門部に10cm大の一部黒色調の隆起性病変を認めた.また食道の切歯より30cmの位置に一部に軽度の隆起を伴う黒色調で平坦な病変を認めた.両病変に連続性はなく,生検で悪性黒色腫と病理診断された.腹部CT検査では胃噴門部~胃小弯側に多発結節を認め,肝臓,右腎,後腹膜,腸間膜に多発性の腫瘍性病変がみられた.【入院後経過】食道原発悪性黒色腫の胃転移,多発肝転移,右腎転移,リンパ節転移,腹膜播種と診断し,ダカルバジン単独療法を3クール施行し一時腫瘍縮小がみられたが,3か月後に腫瘍増大認めPD判断となった.c-kit陽性であったがイマチニブに反応せず.インターフェロン治療中に肺炎を発症し,その後徐々に全身状態悪化し永眠された.【剖検所見】食道悪性黒色腫として矛盾しない所見であり,皮膚,胃,肝臓,脾臓,心臓,腹膜播種,リンパ節などの全身に転移を認めた.【考察】食道悪性腫瘍における悪性黒色腫の割合は0.1%と非常に稀である.進行悪性黒色腫に対し日本で承認されている薬剤は今回も使用したダカルバジンのみであるが,欧米では分子標的薬,免疫療法の分野で新薬の様々な治験が行われており,近年の進歩が著しい分野である.今回,遠隔転移を認め極めて予後不良な段階であったが,ダカルバジンにより一時的な腫瘍縮小効果が認められた,胃転移を伴う食道原発悪性黒色腫の剖検例を経験したので若干の文献的考察を加えて報告する.
索引用語 食道悪性黒色腫, 胃転移