セッション情報 一般演題

タイトル 175:

病理学的に病態を確認し得た上行結腸憩室炎に合併した上腸間膜静脈血栓症の1例

演者 木下 幸寿(北海道消化器科病院 内科)
共同演者 目黒 高志(北海道消化器科病院 内科), 藤澤 良樹(北海道消化器科病院 内科), 町田 卓郎(北海道消化器科病院 内科), 加藤 貴司(北海道消化器科病院 内科), 碇 修二(北海道消化器科病院 内科), 佐々木 清貴(北海道消化器科病院 内科), 山田 裕人(北海道消化器科病院 内科), 加賀谷 英俊(北海道消化器科病院 内科), 中村 英明(北海道消化器科病院 内科), 堀田 彰一(北海道消化器科病院 内科), 森田 高行(同 外科), 高橋 利幸(同 病理)
抄録 【症例】68歳女性。既往歴:高血圧、繰り返す憩室炎。現病歴:平成24年9月、39℃台の高熱と腹痛のため当院救急外来を受診し、精査加療目的に当科入院となった。入院時現症:身長147.7cm、体重36.9kg、血圧73/53mmHg、体温39.0℃。腹部は軟、軽度膨満、グル音を聴取、右下腹部に軽度圧痛あり、筋性防御・反跳痛なし。血液検査では、CRPの上昇を認め、さらに血小板減少、線溶系の亢進を認め、DICを呈していた。腹部造影CT検査では、回盲部周囲の脂肪識の上昇、上腸間膜静脈血栓症(SMV-T)を認め、上行結腸憩室炎に合併したSMV-T、敗血症性ショックと診断した。抗生剤、オルガラン®の投与を開始し、バイタルの安定や血液検査所見の改善は得られたが、第3病日の腹部造影CT検査ではSMV-Tは増悪を認めたため、オルガラン®はヘパリンナトリウムに変更して、ワルファリンカリウムとウロキナーゼを併用して開始した。第16病日の腹部造影CTではSMV-Tの縮小を認め、ワルファリンカリウム単独の投与とした。第31病日、憩室炎の再発予防として今回の責任病巣の切除目的に右半結腸切除術を施行した。病理学的には上行結腸に多数憩室があり、憩室や血管周囲に肉芽の形成を認めた。肉芽は異物型多核巨細胞を含んでおり、巨細胞は食物残渣と思われる異物を貪食していた。また肉芽に隣接する静脈に血栓性閉塞性静脈炎を合併し、断端の静脈まで進展していた。術後良好に経過し、第34病日よりワルファリンカリウムを再開し、第46病日に退院とした。憩室炎に伴う上腸間膜静脈血栓症は臨床で時おり経験され、要因としては感染性静脈炎のほか、高熱や脱水による循環血液量の減少や、血液粘稠度上昇による凝固亢進状態があるとされている。しかしながら実際には、病態を示す病理像が提示された報告はほとんどない。本症例は病理学的に上記病態を確認しえた症例であり、若干の文献的考察を加えて報告する。
索引用語 憩室炎, 腸間膜静脈血栓症