セッション情報 | 一般演題(専修医(卒後3-5年)) |
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タイトル | 130:薬剤性劇症肝炎亜急性型を救命し得た脳死肝移植2症例の検討 |
演者 | 渋谷 一陽(北海道大学消化器外科I) |
共同演者 | 後藤 了一(北海道大学消化器外科I), 腰塚 靖之(北海道大学消化器外科I), 高橋 徹(北海道大学消化器外科I), 青柳 武史(北海道大学消化器外科I), 武冨 紹信(北海道大学消化器外科I), 山下 健一郎(北海道大学移植外科), 嶋村 剛(北海道大学臓器移植医療部) |
抄録 | 【背景】わが国の劇症肝炎のうち薬剤性は成因の第2位を占める。劇症肝炎亜急性型は内科治療に抵抗性で予後不良であるが、血液浄化療法を中心とした集中治療と生体・脳死肝移植により救命し得る。これらのうち法改正後の脳死下臓器提供数増加により同疾患患者に対する脳死肝移植が現実的な治療手段となってきた。【目的】脳死肝移植にて救命し得た薬剤性劇症肝炎2例について検討する。【症例】症例1. 65歳女性。2012年肺結核の診断で抗結核薬4剤にて加療中、本年3月末より倦怠感、食欲不振を自覚し、4月末前医受診。T-bil 11.4 mg/dl、AST 640 IU/L、ALT 438 IU/L、PT 30%でありイソニアジドによる薬剤性急性肝炎が疑われた。ステロイドパルス、血漿交換、血液濾過透析で病状の改善なく、発症後30日目に肝性脳症II度となり、劇症肝炎亜急性型の診断で当科紹介。腹部CT上の肝容量は521mlと高度肝萎縮を認めた。喀痰のZiehl-Neelsen染色は陰性であり、胸部CTで活動性肺結核病変を認めず、肝移植の適応とした。医学的緊急度10点で脳死肝移植登録となり、登録後7日目に脳死ドナー発生、脳死肝移植を施行した。移植後経過は良好で51PODに抗結核薬を再開、59PODに退院となった。症例2. 40歳女性。2012年9月降圧薬αメチルドパ250mg内服開始。2013年3月750mgに増量された。5月より全身倦怠感、6月下旬に黄疸を自覚し前医受診。T-bil 18.4 mg/dl、AST 2411 IU/L、ALT 1685 IU/L、PT 28.3%であり、αメチルドパによる薬剤性肝炎が疑われた。ステロイドパルス、血漿交換等施行、発症後16日目にII度脳症を認め、以後脳症は進行した。脳症発症後2日目に当科紹介受診、D/T比 0.25、腹部CTで著明な肝萎縮を認め、劇症肝炎亜急性型の診断となり、高置換量血液濾過を開始。翌日脳症改善し医学的緊急度10点で脳死肝移植待機となった。登録翌日に脳死ドナー発生し脳死肝移植を施行、術後経過良好にて45PODに退院となった。【結語】劇症肝炎発症後速やかに脳死肝移植登録を行い救命できた2症例を経験した。肝臓内科・移植外科の綿密な連携と遅滞の無い対応が劇症肝炎の救命に必須である。 |
索引用語 | 薬剤性劇症肝炎, 脳死肝移植 |