セッション情報 一般演題(専修医(卒後3-5年))

タイトル 132:

胃全摘後に発生し転移性肝癌と鑑別を要した肝S4限局性脂肪肝の1例

演者 那須野 央(市立釧路総合病院 消化器内科)
共同演者 米澤 和彦(市立釧路総合病院 消化器内科), 川上 裕次郎(市立釧路総合病院 消化器内科), 本間 賢太(市立釧路総合病院 消化器内科), 藤井 健一(市立釧路総合病院 消化器内科), 高橋 文彦(市立釧路総合病院 消化器内科), 鈴木 一也(市立釧路総合病院 消化器内科), 阿部 敬(市立釧路総合病院 消化器内科), 篠村 恭久(札幌医科大学付属病院 消化器・免疫・リウマチ内科学講座)
抄録 今回我々は胃癌による胃全摘後8か月目に新規に発生した肝S4の限局性脂肪肝の1例を経験したので報告する。患者は40歳代、男性。平成24年4月頃より時々胃痛あり、同年12月に近医受診。胃内視鏡検査で胃角部の進行胃癌と診断され、同年同月当科に紹介となった。当科の精査で、胃角部小彎中心の3型進行胃癌、明らかな遠隔転移、リンパ節転移なしと診断し、平成25年1月に当院外科で胃全摘術、Roux-Y再建術を施行した。術後病理所見は、UML、LESS、type3、550x500mm、tub2、SS、Ly1、v0、PM(-)、DM(-)、pP0、pH0、CY0、CurA、UICC 6版に準じると、pT2N1M0、StageIIであった。平成25年2月より術後補助化学療法としてS-1 100mgを開始した(4週内服2週休薬)。S-1内服を継続していたところ、平成25年9月の造影CTで、肝S4に新規に約3mmの円形で境界明瞭な低吸収域の腫瘤が出現した。動脈層、平衡相で造影効果なく、内部に血管陰影を認めた。胃癌肝転移が疑われ諸検査を行った。S4腫瘤は腹部超音波検査では境界不明瞭な高輝度エコーとして描出された。肝EOB-MRIでは造影効果なく、T1 in phase高信号でT1 out of phase低信号、肝細胞相(20分)でdefectを示した。またPET-CT検査でFDG集積は認めなかった。以上の諸検査よりS4病変は脂肪成分を豊富に含むこと、またS4背側に存在することより限局性脂肪肝が最も考えられたが、肝EOB-MRI肝細胞相(20分)でdefectを示したこと、また6か月前までは画像上存在せず新規に出現したことから、悪性腫瘍を否定する必要があると考え確定診断を目的に21G針による吸引組織診を行った。結果は著明な脂肪肝であり、限局性脂肪肝と診断した。患者は現在も外来で術後補助化学療法を継続中である。胃癌術後にS4に限局性脂肪肝が発生した報告が散見される。その原因は胃静脈還流異常と考えられており、文献的考察を加えて報告する。
索引用語 限局性脂肪肝, 転移性肝癌