セッション情報 一般演題(専修医(卒後3-5年))

タイトル 038:

脊髄炎に対するステロイドパルス療法後に発症したサイトメガロウイルス腸炎の一例

演者 石井 貴大(旭川医科大学病院 第3内科)
共同演者 上野 伸展(旭川医科大学病院 第3内科), 坂谷 慧(旭川医科大学病院 第3内科), 田中 一之(旭川医科大学病院 第3内科), 堂腰 達矢(旭川医科大学病院 第3内科), 藤林 周吾(旭川医科大学病院 第3内科), 安藤 勝祥(旭川医科大学病院 第3内科), 後藤 拓磨(旭川医科大学病院 第3内科), 嘉島 伸(旭川医科大学病院 第3内科), 笹島 順平(旭川医科大学病院 第3内科), 稲場 勇平(旭川医科大学病院 第3内科), 伊藤 貴博(旭川医科大学病院 第3内科), 盛一 健太郎(旭川医科大学病院 第3内科), 藤谷 幹浩(旭川医科大学病院 第3内科), 高後 裕(旭川医科大学病院 第3内科)
抄録 症例は70歳、男性。2013年8月、早朝より誘因無く突然右下肢の脱力、歩行困難が出現し当院救急外来へ救急搬送された。脊髄炎の診断となり当院神経内科に入院となった。脊髄炎に対してステロイドパルス療法を2回施行後より血性下痢が出現したため消化器内科を受診した。両下肢麻痺のためS状結腸内視鏡検査を施行したところ、直腸からS状結腸にかけて浮腫状の粘膜と縦走潰瘍を認めた。虚血性大腸炎を疑い腸管安静としたところ一時的に症状は軽快したが、食事開始後に再び発熱と水様便が出現した。初回CS時に行った潰瘍面からの生検でサイトメガロウイルス(CMV)封入体が認められたため、重症CMV感染を疑い再度CSを施行した。直腸からS状結腸にかけて白色の肉芽様組織を認め、一部縦走傾向を認めた。NBI観察では病巣表面に血管構造は認めなかった。同部位より再度生検を施行しCMV感染を確認、血液検査においてもCMVアンチゲネミアが陽性であったことから重症CMV腸炎と診断した。ガンシクロビル5mg/kgの投与を開始したところ速やかに水様便は改善し、解熱した。投与後2週間で血中のCMVアンチゲネミアが陰性化した。再度CSを施行したところ肉芽様組織は瘢痕化しており、同部位からの生検でもCMVが検出されなくなったことから治癒と判断した。近年、臓器移植や化学療法の進歩にともなう免疫不全患者の増加から、CMV腸炎が増えてきている。CMV腸炎の内視鏡所見は特徴的な打ち抜き潰瘍に加えて、浅い不整形潰瘍や輪状潰瘍など多彩な変化を呈する。しかし、本症例のように縦走潰瘍で発症し、肉芽組織を形成した報告はなく、CMV腸炎の内視鏡診断の一助となる貴重な症例と考えられた。
索引用語 CMV腸炎, 免疫抑制療法