セッション情報 一般演題(研修医(卒後2年迄))

タイトル 034:

リンパ濾胞過形成から典型像へ進展した潰瘍性大腸炎の1例

演者 鬼頭 健一(札幌厚生病院 IBDセンター)
共同演者 那須野 正尚(札幌厚生病院 IBDセンター), 宮川  麻希(札幌厚生病院 IBDセンター), 田中  浩紀(札幌厚生病院 IBDセンター), 本谷 聡(札幌厚生病院 IBDセンター), 今村 哲理(札幌厚生病院 IBDセンター), 市原 真(札幌厚生病院 臨床病理科), 後藤田 祐子(札幌厚生病院 臨床病理科), 村岡  俊二(札幌厚生病院 臨床病理科)
抄録 症例は28歳男性.平成24年7月初旬より1日2~3行の血便が出現し近医を受診,精査加療目的に当科紹介受診となった.下部消化管内視鏡検査では直腸(Rb~Ra)にびらんを伴う小隆起が多発しており,S状結腸には発赤を伴うアフタが多発していた.便培養・直腸粘膜培養では特異的な原因菌は検出されず,生検による病理組織学的所見ではリンパ濾胞過形成と軽度のリンパ球浸潤を認めるのみであり,腺管のねじれや杯細胞の減少・消失・陰窩炎・陰窩膿瘍等の潰瘍性大腸炎を示唆する所見は認めなかった.浸潤リンパ球に異型性を認めず,免疫組織学的検索においても悪性リンパ腫は否定的であり,クラミジア直腸炎を示唆する組織学的封入体,血清抗Chlamydia trachomatis抗体(IgGおよびIgA)はいずれも陰性であった.以上より,原因不明の反応性リンパ濾胞過形成と診断し経過観察となった.その後も症状は持続していたが自己判断にて放置し,1年後に当科を再診された.1年後の下部消化管内視鏡検査では,直腸からS状結腸にかけて血管透見像の低下,易出血性を伴う細顆粒状粘膜を認め,直腸の小隆起は不明瞭であるが残存していた.生検では杯細胞の減少,リンパ球・形質細胞浸潤,陰窩炎等の病理組織所見を認めた.以上より,左側大腸炎型の潰瘍性大腸炎と診断し5-アミノサリチル酸製剤(5-ASA)内服による治療を開始した.その後,5-ASA不耐症と判断され,現在血球成分除去療法を施行中である.内視鏡的あるいは病理組織学的に直腸に認められる原因不明のリンパ濾胞過形成は,経過とともに潰瘍性大腸炎の典型像へと進展することが指摘されている.近年潰瘍性大腸炎の初期病変の可能性があるとして注目されているが,その報告数は少なく詳細は明らかにされていない.今回我々はリンパ濾胞過形成から典型像へ進展した潰瘍性大腸炎の1例を経験したので報告する.
索引用語 潰瘍性大腸炎, リンパ濾胞過形成