セッション情報 合同シンポジウム「全身性疾患に伴う消化器疾患」

タイトル S1-3:

当科におけるHCV/HIV重複感染症の現状

演者 荘 拓也(北海道大学 消化器内科)
共同演者 中馬 誠(北海道大学 消化器内科), 佐藤 史幸(北海道大学 消化器内科), 常松 聖司(北海道大学 消化器内科), 佃 曜子(北海道大学 消化器内科), 寺下 勝巳(北海道大学 消化器内科), 中井 正人(北海道大学 消化器内科), 堀本 啓大(北海道大学 消化器内科), 須田 剛生(北海道大学 消化器内科), 夏井坂 光輝(北海道大学 消化器内科), 藤本 勝也(北海道大学 血液内科), 遠藤 知之(北海道大学 血液内科), 豊嶋 崇徳(北海道大学 血液内科), 坂本 直哉(北海道大学 消化器内科)
抄録 【背景】HIV感染症に対してはHAART療法による著しい予後の改善を認めている。それに伴いHCV/HIV重複感染症において肝疾患関連死亡が半数を占めるに至っているのが現状である。【目的・方法】HCV/HIV重複感染症患者における現在の肝機能および画像検査所見を評価する。【結果】29例全例男性、年齢中央値は47歳。HCV/HIV重複感染の原因としては、血友病Aが21例、血友病Bが4例、ホモセクシャルが4例であった。HAARTは29例中28例に施行されており、HIV-RNAは28例中24例で検出感度以下に増殖が抑制されていた。HCV-RNAは検出感度以下8例、未治療症例のHCV-RNA中央値は6.1log IU/mlであった。29例中16例に抗HCV療法が行われた。HCV genotypeは1a+1bが4例、3aが3例、2a+3aが2例、1b+3aが2例、1bが2例、2aが1例、判定不能が1例。治療内容はIFN単独3例、PEG-IFN単独4例、IFN+RBV2例、PEG-IFN+RBV13例であった(のべ22回の治療)。治療効果はSVR獲得が5例でSVR率は31.3%であった。血液検査では血小板数11.1万/μl(以下中央値)であり、10万未満を12例に認めた。一般肝機能検査は総ビリルビン値0.8mg/dl、アルブミン値4.3g/dl、PT83.1%、ALT34IU/mlと肝機能が保たれている症例の割合が多かった。これに基づいたChild-PughスコアはA/B/Cが25例/3例/1例とAの割合が多かった。画像所見にて肝硬変が13例、脾腫がある症例は9例であった。2例で肝細胞癌の合併を認めているが、RFAにて治療を施行している。上部消化管検査では7例に食道静脈瘤を認め、4例に門脈圧亢進症性胃炎の所見を認めた。【考察】今回の患者群では、治療法にばらつきはあるもののSVR率は31.3%であった。一般肝機能検査は正常範囲内でChild-PughスコアAの症例が多いものの、血小板数が低下している症例、画像上で肝硬変の所見が認められ、門脈圧亢進を認める症例が含まれていることが判明した。HCV/HIV重複感染患者は肝線維化の進行が早く、潜在的な門脈圧亢進の存在の可能性があるため、HCV単独感染者よりも早い時期から将来的な治療のオプションとしての肝移植を念頭においたフォローアップが必要となると思われる。
索引用語 HCV/HIV重複感染症, HCV