セッション情報 一般演題(研修医(卒後2年迄))

タイトル 145:

腸管出血性大腸菌感染により溶血性尿毒症症候群をきたした成人例

演者 木脇 佐代子(札幌社会保険総合病院)
共同演者 藤澤 倫子(札幌社会保険総合病院), 今井 亜希(札幌社会保険総合病院), 高木 智史(札幌社会保険総合病院), 吉田 純一(札幌社会保険総合病院)
抄録 症例は50歳代女性。2013年8月下旬、右下腹部と中心とした腹痛と下痢にて前医を受診した。急性腸炎の診断となり補液、抗生剤処方で経過観察となった。症状改善なく血便が出現したため、前医を再診した。採血で炎症反応上昇を認め、入院加療目的に当科紹介受診となった。腹部は平坦軟でグル音が亢進していた。全体的に圧迫感があり、右下腹部に最大圧痛点があり、その周囲に反跳痛を認めた。CTにて回盲部から横行結腸にかけて著明な腸管壁肥厚を認め、骨盤内や右傍結腸溝に腹水を認めた。採血、CTより感染性腸炎、特に腸管出血性大腸菌感染の可能性を考え、同日加療目的に入院となった。入院後、絶食と抗生剤で治療開始した。便培養をおこなったが下痢起因菌は検出されなかった。徐々に症状は改善傾向であったが、採血にてビリルビン上昇、腎機能悪化を認めた。著明な血小板減少も出現したため、播種性血管内凝固症候群や溶血性尿毒症症候群を考慮し、血小板輸血を施行し、遺伝子組換え型トロンボモジュリン投与を開始した。その後病原性大腸菌O157LPS抗体が陽性の判定となった。徐々に血小板数が改善し、腎機能の正常化、症状の改善を認め、退院した。本症例は便培養では下痢起因菌は検出されなかったが、病原性大腸菌O157LPS抗体陽性であったため、腸管出血性大腸菌による溶血性尿毒症症候群(hemolytic-uremic syndrome:HUS)をきたした症例であったと診断した。HUSは小児で多い病態であるが、今回成人発症で薬物投与のみで軽快した症例を経験したので、若干の考察を踏まえて検討する。
索引用語 腸管出血性大腸菌, 溶血性尿毒症症候群(hemolytic-uremic syndrome:HUS)