セッション情報 合同ワークショップ「消化器疾患における診断治療困難例への対処」

タイトル W1-3:

微量腹水に対するEUS-FNA (EUS-guided paracentesis)の有用性と安全性

演者 久居 弘幸(伊達赤十字病院 消化器科)
共同演者 平子 匡(伊達赤十字病院 消化器科), 小柴 裕(伊達赤十字病院 消化器科), 宮崎 悦(伊達赤十字病院 内科), 前田 喜晴(伊達赤十字病院 外科), 佐藤 正文(伊達赤十字病院 外科), 川崎 亮輔(伊達赤十字病院 外科), 行部 洋(伊達赤十字病院 外科), 上野 峰(伊達赤十字病院 外科), 在原 洋平(伊達赤十字病院 消化器科DELIMITER札幌医科大学 腫瘍・血液内科学講座), 池田 裕貴(伊達赤十字病院 消化器科DELIMITER札幌医科大学 腫瘍・血液内科学講座)
抄録 【目的】経皮的穿刺困難、もしくは不適切と考えられる微量腹水に対するEUS-FNA(EUS-guided paracentesis: EUS-P)に関する報告は未だ散見されるのみである。今回、微量腹水に対するEUS-Pの有用性と安全性について検討した。
【方法】対象は2005年8月~2013年11月までに経皮的穿刺不可能な微量腹水の診断目的にEUS-Pを試みた55例で、そのうち39例(70.9%)にEUS-Pを施行した。全例、鎮静剤を投与し、入院で施行した。消化管蠕動抑制のための必要十分量の鎮痙剤を投与し、腹水描出後、穿刺ルートに血管がないことをドプラーモードで確認後に穿刺吸引し、検体は細胞診の他、可能なかぎり、一般性状、CBC、生化学(総蛋白、アルブミン、LDH)、腫瘍マーカー(CEA、CA19-9など)、細菌培養に提出した。経直腸穿刺の際には予防的に抗菌薬を投与し、腸管洗浄後に施行した。検討項目は、1)EUS-P施行中止例の理由、2)施行例の患者背景、3)穿刺針の選択および検体採取量、4)診断成績、5)偶発症、とした。
【成績】1)施行中止15例の理由は、腹水消失・検出不能9例、穿刺ルート確保困難5例、多量の食物残渣の存在1例であった。2)年齢は49~92歳(平均73.7歳)、男性29例、女性10例で、悪性疾患の既往または存在を35例(89.7%)に認めた。EUS-P施行前のCTでは39例中27例(69.2%)に少量の腹水が検出された。穿刺ルートは経胃的21例、経十二指腸的1例、経直腸的17例であった。3)穿刺針は原則22Gの手動穿刺針で施行したが、消化管のたわみにより穿刺不可能な2例に22G自動穿刺針、25G手動穿刺針を使用した。検体採取量は1~50ml(平均12.8ml)であった。4)EUS-Pでclass Iであった胃癌2例は偽陰性(開腹所見で腹膜播種確認・化学療法中の腹水増減)であり、sensitivity 71.4%、specificity 100%、PPV 100%、NPV 92.6%、accuracy 94.9%であった。5)発熱、腹痛、出血、穿孔は認めなかった。細菌培養を施行した28例中23例(82.1%)で細菌が検出されたが、細菌性腹膜炎を来した例は認めなかった。
【結論】経皮的穿刺困難な微量腹水症例に対するEUS-Pは有用で安全な診断手技である。
索引用語 EUS-FNA, 微量腹水