セッション情報 一般演題

タイトル 092:

横紋筋融解を合併した劇症型Wilson病の最高齢女性の1例

演者 山崎 大(手稲渓仁会病院 消化器病センター)
共同演者 姜 貞憲(手稲渓仁会病院 消化器病センター), 永井 一正(手稲渓仁会病院 消化器病センター), 松居 剛志(手稲渓仁会病院 消化器病センター), 辻 邦彦(手稲渓仁会病院 消化器病センター), 児玉 芳尚(手稲渓仁会病院 消化器病センター), 桜井 康雄(手稲渓仁会病院 消化器病センター), 常松 泉(東栄病院 消化器内科), 髭 修平(札幌厚生病院 第3消化器科), 狩野 吉康(札幌厚生病院 第3消化器科), 後藤 了一(北海道大学 臓器移植医療部), 青柳 武史(北海道大学 臓器移植医療部), 嶋村 剛(北海道大学 臓器移植医療部), 真口 宏介(手稲渓仁会病院 消化器病センター)
抄録 【はじめに】劇症型Wilson病は時に成人にも見られるが発症年齢は概ね40歳迄であり、横紋筋融解の合併は小児例の報告に限られている。著しいCPK高値と意識障害を伴う成因不明急性肝不全として発症し、横紋筋融解を合併した既報中最高齢の劇症型Wilson病を経験した。【症例】54歳女性。2012年11月29日に下腿浮腫で近医を受診し、アルコール性肝硬変と診断された。浮腫の制御のため12月3日より前医に入院、利尿薬を投与された。12月10日に発熱と肝障害を認め、その後に急性腎不全・溶血性貧血・横紋筋融解・意識障害を呈したため、12月12日に当センターに転入した。既往歴に特記事項なし。入院時、肝性昏睡IV度で黄疸が著明であった。AST 607 U/l、ALT105 U/l、T. bil 39.3mg/dl、D.bil 26.1mg/dl、ALP 86 U/l、NH3 149μg/dl、PT活性16.4%と急性肝不全を呈し、RBC 161万/μl、Hb 6.1g/dl、網状赤血球9.5%、ハプトグロビン10 mg/dlで、Coombs陰性の溶血性貧血、Cr 5.04 mg/dl、CPK 33202 U/lと急性腎不全、横紋筋融解も伴っていた。成因不明の昏睡型急性肝不全として入院当日より血漿交換と血液濾過透析を施行した。CPK値は初日に最高値を呈し、翌日以降は急速に減少に転じた。また血清遊離銅は第2病日に237μg/dlの最高値を認め、翌日から急減した。第6病日にセルロプラスミン低値(18mg/dl)が判明し直ちに眼科を受診、Kayser-Fleischer ringを確認した。尿中銅は52.6μg/日と高値であった。Wilson病と診断しD-ペニシラミン、亜鉛投与を開始、第9病日に脳死登録を行い医学的緊急度10点で待機した。しかし、カンジダ感染や心不全を合併し、第68病日に永眠された。ATP7B遺伝子にp.Asn1270Ser、p.Ile1336Thrを確認し、Wilson病と確定診断した。【考察と結語】CPK値と血清遊離銅がほぼ同期して増減していたことから、血清遊離銅の上昇には、横紋筋融解による筋肉内蓄積銅の血中へ逸脱が影響した可能性が推察される。最高齢発症の劇症型Wilson病に、横紋筋融解を合併した1例を経験した。原因不明の急性肝不全では、年齢に関わらず、劇症型Wilson病を鑑別に入れる必要がある。
索引用語 Wilson病, 横紋筋融解