セッション情報 合同ワークショップ「消化器疾患における診断治療困難例への対処」

タイトル W1-8:

HBV再活性化関連肝炎の検討

演者 松居 剛志(手稲渓仁会病院 消化器病センター)
共同演者 姜 貞憲(手稲渓仁会病院 消化器病センター), 永井 一正(手稲渓仁会病院 消化器病センター), 山崎 大(手稲渓仁会病院 消化器病センター), 辻 邦彦(手稲渓仁会病院 消化器病センター), 真口 宏介(手稲渓仁会病院 消化器病センター)
抄録 【目的】免疫・化学療法によるHBV再活性化肝炎は免疫抑制状態のもとでHBVが増殖し、免疫抑制が解除され重篤な肝細胞障害を引き起こす。一方、慢性HBVキャリアでも自然経過でHBVの増殖が生じ重篤な肝障害が発症する。両者の発症機序は異なるものの、病態の一部は類似している。そこで、今回、HBV再活性化肝炎(RE)とHBV慢性キャリアから生じた急性増悪の臨床指標を比較検討した。【対象】免疫・化学療法前にHBV感染が指摘されたRE10例(RE群)と、特に誘因がなくHBV慢性キャリアから急性増悪した39例(AE群)。ALT最高値200U/L未満の症例は除外した。【方法】1.両群の臨床像、2.治療法とその成績を比較検討した。【結果】1.RE群の基礎疾患は血液疾患3例、固形癌5例、その他2例であった。RE群/AE群で、男女比は4:6/24:15で、年齢中央値は46/56歳とRE群では低かった(p=0.0022)。最低PT 活性54.0%/65.7%、peak ALT 593/602U/L、peak T-Bil 2.2/2.0mg/dlでは差はなかった。HBeAg陽性率では0%(0/10)/52.3%(20/39)とRE群で低いが(p= 0.0032)、HBsAg量4462.3/2622.5IU/ml、HBV DNA 6.4/7.2LC/ml, HBcrAg 6.9/6.8logU/ml、Genotype A:B:C;0:3:6/1:8:29、PC W:M 2:7/16:23、BCP W/M 4:4/13:26で差はなかった。2.核酸アナログは90%(9/10)/64%(25/39)で使用され、ステロイドパルス療法・免疫抑制剤は40%(4/10)/ 23%(9/39)で使用されていた。このうちPT活性値が40%未満の群では100%(3/3)/ 50%(7/14)と再活性化群でステロイドパルス療法・免疫抑制剤が多く使用されていた(p=0.010)。RE群では5例(50%)が生存、2例(20%)が原病死、3例(30%)が肝関連死であり、肝関連死の3例は最低PT活性値が40%未満であった。一方、AE群では33例(85%)が生存、1例が他病死(2%)、5例(13%)が肝関連死であった。【考察】RE群ではHBeAg陽性率は低い以外は、生化学的・HBV感染指標などには差は認めなかった。最低PT活性値が40%未満の再活性化群の3例にはステロイドパルス療法・免疫抑制剤が使用されていたにもかかわらず全例死亡した。このことから、HBV再活性化症例には速やかな治療介入が必要と考えられた。
索引用語 HBV, 再活性化