共同演者 |
垂石 正樹(市立旭川病院 消化器病センター), 杉山 隆治(市立旭川病院 消化器病センター), 川内 宏仁(市立旭川病院 消化器病センター), 小澤 賢一郎(市立旭川病院 消化器病センター), 中村 和正(市立旭川病院 消化器病センター), 助川 隆士(市立旭川病院 消化器病センター), 千葉 篤(市立旭川病院 消化器病センター), 斉藤 裕輔(市立旭川病院 消化器病センター), 福永 亮朗(市立旭川病院 外科), 川島 和之(市立旭川病院 放射線科) |
抄録 |
症例は45歳、女性。17歳で発症し、28年経過した小腸大腸型クローン病で、23歳時、29歳時に大腸、小腸切除術を受け、35歳より直腸膣瘻も指摘されていた。40歳時より当科で加療中であるが、回腸皮膚瘻がしばしば再燃し病勢コントロールのため2011年6月よりアダリムマブを導入し、主に外来で治療を継続していた。2013年8月になり異常帯下のため当院産婦人科を受診。婦人科診察で膣壁に腫瘍の露出を指摘され生検で腺癌の診断となった。原発検索のため施行した大腸内視鏡検査で直腸Rb前壁に粘液豊富な絨毛様に増殖する腫瘍が認められ、同部位からの生検でも粘液産生を示す腺癌の診断で膣壁の腫瘍の生検組織と同様の組織像であった。CT,MRI検査では直腸から膣にかけて連続する腫瘍がみられ、直腸膣瘻から発生した瘻孔癌と診断した。遠隔転移は認めなかったが、切除範囲・手術侵襲の軽減を期待して術前化学放射線療法を行う方針とした。放射線照射による腸管障害を予防する目的で、まず、吻合部を含めた小腸切除とハルトマン手術、下行結腸人工肛門造設術を施行。術後3W目から45Gy/25F/5Wの放射線治療と5FU 350mg/24hr/5Wの化学療法を施行した。治療終了2.5W後の11月14日、直腸切除、子宮付属器、膣合併切除を施行。病理結果はmucinaous carcinoma,SI(膣),N0,M0,Stage2であった。術後経過は順調で、栄養療法の再開とともにhigh grade stage2として今後Adjuvant chemotherapyを予定している。 クローン病に直腸膣瘻の合併は時に見られるが、直腸膣瘻の癌合併は非常にまれであり診断が困難とされている。本症例でも局所の症状の訴えはほとんどなく異常帯下から婦人科診察で診断された。長期に経過した痔瘻、膣瘻などの瘻孔を有するクローン病においては常に癌の合併を念頭においた診療が重要であることを示唆する貴重な症例と考え報告する。 |