セッション情報 一般演題

タイトル 164:

直腸癌に対する化学療法後に発症した門脈圧亢進症の1例

演者 武藤 桃太郎(JA北海道厚生連 遠軽厚生病院 内科)
共同演者 杉山 浩平(JA北海道厚生連 遠軽厚生病院 内科), 武藤 瑞恵(JA北海道厚生連 遠軽厚生病院 内科), 石川 千里(JA北海道厚生連 遠軽厚生病院 内科), 井上 充貴(JA北海道厚生連 遠軽厚生病院 内科), 升田 晃生(JA北海道厚生連 遠軽厚生病院 外科), 高橋 裕之(JA北海道厚生連 遠軽厚生病院 外科), 萩原 正弘(JA北海道厚生連 遠軽厚生病院 外科), 青木 貴徳(JA北海道厚生連 遠軽厚生病院 外科), 橋本 道紀(JA北海道厚生連 遠軽厚生病院 外科), 稲葉 聡(JA北海道厚生連 遠軽厚生病院 外科), 矢吹 英彦(JA北海道厚生連 遠軽厚生病院 外科)
抄録 Oxaliplatinを含む化学療法により肝類洞障害が生じ、その結果、門脈圧亢進症状が生じる例があることが知られている。今回我々は、多発肝転移を有する直腸癌(cStage4;SS, N2, H3, M1(肺))に対してmFOLFOX6+Bevacizumab(BV)療法を施行後、新たに血小板減少、脾腫、食道静脈瘤といった門脈圧亢進症状が出現した1例を経験した。症例は35歳男性。半年前からの血便を主訴に2012年10月当科を受診した。下部消化管内視鏡検査で上部直腸に3 cmの2型腫瘍を認め、生検で高分化腺癌の診断となった。CT検査で多発肝転移、肺転移を認め、切除不能と判断し、mFOLFOX6+BV療法を開始した。当初20万台後半であった血小板数は、mFOLFOX6+BV療法4コース目より10万台となり、11コース目より7万から8万を推移するようになったため、dose downして治療継続した。抗腫瘍効果はPRであったが、16コース目で末梢神経障害がGrade2に達したため、Oxaliplatinを終了しsLV5FU2+BV療法を2コース継続した。腫瘍マーカーの上昇もあり2013年7月よりFOLFIRI+BV療法に変更した。血小板数は依然7万から8万を推移し、FOLFIRI+BV療法3コース後のCT検査で、当初認めていなかった脾腫を認めた。肝表面の不整や肝萎縮などの肝硬変を示唆する所見や、門脈腫瘍栓・血栓症などは見られなかった。また上部消化管内視鏡検査を施行したところ、Lm, F1, Cb, RC(-)の食道静脈瘤を認めた。血小板減少、脾腫、食道静脈瘤の出現は門脈圧亢進症状によると考えられ、経過からはOxaliplatinの関与が強く疑われた。現在Oxaliplatin終了後半年経過したが、血小板低下、脾腫ともにほとんど改善していない。しかし、術後にFOLFOX療法を開始後新たに生じた脾腫のうち、35%がFOLFOX療法終了後半年以内、87%が1年以内、全例が1年半以内に改善しはじめるとの報告もあり、慎重な経過観察が必要と考えられる。今回我々は、Oxaliplatinによる非肝硬変性門脈圧亢進症が疑われた1例を経験したので、報告する。
索引用語 Oxaliplatin, 門脈圧亢進症