セッション情報 一般演題

タイトル 165:

化学療法中に穿孔を来たした盲腸癌の一例

演者 今井 亜希(札幌社会保険総合病院 消化器内科)
共同演者 藤澤 倫子(札幌社会保険総合病院 消化器内科), 高木 智史(札幌社会保険総合病院 消化器内科), 吉田 純一(札幌社会保険総合病院 消化器内科)
抄録 症例は60歳代女性。他科通院中の定期採血にて貧血進行を指摘、2013年6月同科に入院となった。CTで盲腸から腹壁に浸潤する造影効果のある腫瘤と肝、腹腔内、肺に多発する腫瘤、腹水貯留、リンパ節腫大を認めた。以上より盲腸癌、多発転移が疑われ当科転科となった。下部消化管内視鏡、造影検査にて盲腸に隆起性病変を認め、生検で高分化腺癌の診断であった。盲腸癌 5型80×67mm T4b(腹壁)N3 M1b stageIVと診断した。外科的処置は困難と判断し化学療法の方針とした。癌性腹膜炎の腸管運動麻痺による嘔吐出現、胃管留置し絶食のまま、2013年7月上旬より5-FU/ l-leucovorin(LV)を開始とした。食事摂取は可能となり、2コース目継続の予定であったが、徐々に炎症反応が上昇し、2013年8月(Day53)右下腹部に膨隆所見を認めCT施行したところ、盲腸の腫瘤は著明に縮小し、腫瘤が浸潤していた腹壁は大きな欠損像となり、腸内容物がガスとともに腹腔内に限局して広がり、前腹壁に気腫を形成していた。腹痛症状は認めなかった。肝・腹腔内腫瘤、リンパ節転移ともに縮小、化学療法1コース終了時の効果判定は部分奏功であったが、穿孔性腹膜炎の診断で化学療法の継続は不可能と判断、全身状態をふまえBest supportive careの方針とした。絶食、抗生剤にて炎症反応は改善傾向を認め、食事再開、腹部膨隆部は徐々に増大、皮膚は水疱化し、その後自然に瘻孔となり腸管皮膚瘻を形成、排便流出を認めた。その後も食事摂取は継続のまま症状増悪なく経過していた。2013年9月下旬(Day84)、血小板減少を認め、癌性の播種性凝固症候群(DIC)と診断、対症療法で経過観察、10月上旬(Day98)、脳梗塞を発症し翌日永眠された。
分子標的薬による消化管穿孔の報告はあるも、大腸癌において化学療法での穿孔はまれである。盲腸癌腹壁浸潤に対し化学療法を施行し穿孔性腹膜炎を来たしたが、皮膚瘻が形成され、保存加療で比較的生存期間が得られた一例を経験したので報告する。
索引用語 大腸癌, 化学療法