抄録 |
背景:近年上部消化管内視鏡検査で咽頭喉頭領域の観察を行い中下咽頭癌の早期発見に役立っている.咽頭喉頭領域の十分な観察は被検者に発声をさせる等協力無しでは困難である.鎮静/鎮痛剤を用いた検査では咽頭観察は不十分で,強力な咽頭麻酔が必要となる.同時に本来の上部消化管内視鏡検査も楽に行えると考える.演者らはリドカイン塩酸塩ビスカス5mlを3分間咽頭に保持した後吐き出し,リドカイン噴霧剤1回(8mg)を10回噴霧し嚥下させた.リドカインの添付文書極量使用により咽頭観察は有意に良好(p<0.005)であったことを報告した.しかし,この使用量はリドカイン中毒の懸念があり,一般的な普及に当たり安全性の確認が急務であった。また,咽頭麻酔薬の嚥下は「消化器内視鏡関連の偶発症に関する全国調査」の中で前処置に伴う偶発症の原因と思われその対策から吐出が推奨されたが,消化器内視鏡ガイドライン第3版に2%リドカイン塩酸塩ビスカスを飲み込ませる方法が記載された.目的:上部消化管内視鏡での咽頭麻酔におけるリドカイン製剤嚥下法の安全性を検討する.1)リドカイン中毒の防止,2)誤嚥の防止について検討した.対象と方法:既に青年男子でリドカイン血中濃度の測定を行い全症例全時間で<1.0μg/mlであったことから,リドカインの代謝に影響すると言われている80歳以上と肝障害(Child B)例を対象とした.十分なICのもと,前,3分後,5分後,7分後,10分後,12分後,15分後,30分後,45分後,60分後に採血を行い,直ちに血清を分離しスピッツに保存しEMIT法で測定した.咽頭麻酔の開始時間はビスカス剤を咽頭に入れた時間とした.誤嚥の防止のため検査中は膿盆に顔を傾け自然と唾液を出すように指示した.成績:85歳に施行したリドカイン血中濃度は全時間で<1.0μg/mlであった.リドカインによるアレルギー/中毒症状の出現はなかった.誤嚥なし.発表では対象例を増やし報告する.結語:青年男子では添付文書のリドカイン投与範囲内の使用で十分な咽頭麻酔ができた.リドカイン濃度は各時間<1.0μg/mlで,中毒域である3μg/mlを越える上昇はなかった. |