セッション情報 一般演題

タイトル 084:

症状に周期性変化を認めた代償期慢性偽性腸閉塞の1例

演者 大久保 秀則(横浜市立大学 医学部 消化器内科)
共同演者 中島 淳(横浜市立大学 医学部 消化器内科), 冬木 晶子(茅ヶ崎市立病院 消化器内科), 秦 康夫(茅ヶ崎市立病院 消化器内科), 菅原 和彦(東京共済病院 消化器内科)
抄録 【背景】慢性偽性腸閉塞症(CIPO)は器質的疾患がないのにもかかわらず慢性的に腸閉塞所見を呈する難治性疾患であり、下部消化管機能性異常の中で最も重篤な疾患である。今回我々は症状に周期性変化を認め、非代償期への移行を回避し得た代償期CIPOの1例を経験したので報告する。【症例】24歳男性。2011年10月頃から胸焼けと腹部膨満感が出現、立位にて膨満感が増悪し、臥位により改善していた。2012年1月から腹部膨満感は自然軽快していたため経過観察していたが、2012年4月以降再び症状が出現するようになった。その後近医での精査にて消化管器質的疾患は否定的であったが小腸の著明な拡張を認めたため内服加療を開始。その後保存的治療で改善した。同年12月にシネMRIを施行し、小腸の著明な蠕動低下を認め、CIPOと診断した。排便は下痢ながら定期的に認めており、食事も経口摂取可能であったが2013年3月に腹部膨満感が再増悪し、近医に入院。小腸型CIPOであったため外科的治療は行わず、腸管拡張は依然として認められたままであったが保存的治療で症状改善を得た。その後4月に数日間の保存治療入院を必要としたが、成分栄養や各種内服により6月に入り症状は安定し、現在通常に経口摂取が可能である。【考察・結語】CIPOは、可逆的に症状緩解が見られる段階(代償期)から不可逆的に症状が持続する段階(非代償期)へと徐々に移行するものと考えられている。CIPOは著明な腸管拡張を来すことが多いが、小腸が罹患部位に含まれる場合、安易な手術はむしろ症状増悪を招き、非代償期への移行のリスクとなってしまうことが報告されている。本症例は器質的な原因なく慢性的に腸閉塞症状を繰り返すためにCIPOと診断したが、手術侵襲を加えなかったために周期的ではあるが緩解期が得られていると考えられる。非代償期への移行を避けるためには、本疾患の認知と共に自然史を周知し不必要な手術を避けることが肝要だと考える。
索引用語 慢性偽性腸閉塞, 保存的加療