セッション情報 専修医セッション(卒後3-5年)

タイトル 001:

診断に難渋したびまん浸潤型食道扁平上皮癌の一例

演者 高橋 慶太(東京慈恵会医科大学 消化管外科)
共同演者 湯田 匡美(東京慈恵会医科大学 消化管外科), 松本 晶(東京慈恵会医科大学 消化管外科), 西川 勝則(東京慈恵会医科大学 消化管外科), 石橋 由朗(東京慈恵会医科大学 消化管外科), 三森 教雄(東京慈恵会医科大学 消化管外科), 小村 伸朗(東京慈恵会医科大学 消化管外科), 矢永 勝彦(東京慈恵会医科大学 外科学講座)
抄録 進行食道癌の肉眼的病型は隆起型、潰瘍限局型、潰瘍浸潤型、びまん浸潤型、その他の型の5種類に分類され、潰瘍限局型と潰瘍浸潤型がその大多数を占める。びまん浸潤型の食道扁平上皮癌はまれで、腫瘍細胞が粘膜下に広がるため初期診断が難しく、予後も悪い。今回、診断に難渋したびまん浸潤型食道扁平上皮癌を経験したので、文献的考察を加え報告する。患者は70歳代男性。嚥下障害と胸部違和感を主訴に2011年10月当科受診。プロトンポンプ阻害薬(PPI)を開始も症状改善せず。上部消化管内視鏡(GIF)施行したが食道裂孔ヘルニアのみでその他異常所見を認めず。2012年2月にPPI抵抗性の非びらん性胃食道逆流症の診断で腹腔鏡下Toupet噴門形成術と食道裂孔ヘルニアに対してメッシュによる修復術を施行。手術時間239分、出血量30mlで終了。術後5日目より嚥下障害の増悪を認め、上部消化管造影にて中部食道に狭窄を認めた。術後の食道運動機能障害と考え術後第14病日に退院。しかし、退院後も症状は軽快せず再度GIFを施行し、切歯より30~36cmの粘膜面に明らかな狭窄を認めた。症状改善のため、内視鏡的バルーン拡張を2回施行。その後PET-CTにて胸部下部食道と右上縦隔リンパ節に軽度の集積があった。術後4か月目に再度GIFを施行したところ、切歯より28から38cmに全周性の狭窄と30cmの部位に粘膜面のびらんとSMT様隆起を認め、同部の生検より扁平上皮癌と診断した。この時点で食道癌Mt~LtcT3N3M0 Stage3と診断し術前化学療法を2回施行。初回の噴門形成術より約6か月後に右開胸開腹食道亜全摘、3領域郭清、胃管再建、胸骨後経路、腸瘻造設術を施行。腫瘍は一部気管に浸潤しており完全切除は断念した。手術時間627分、出血量1,740mlであった。術後合併症を認めず術後第36病日に退院となったが、1週間後に再入院、腫瘍の遺残があると思われる左気管支周囲および縦隔リンパ節を中心に化学放射線療法を施行した。術後約5か月頃より胸水の貯留と腫瘍マーカー上昇を認め、徐々に衰弱し術後約9か月で癌死した。
索引用語 びまん浸潤型, 食道扁平上皮癌