セッション情報 専修医セッション(卒後3-5年)

タイトル 016:

術前CTで診断に至った盲腸軸捻転の1例

演者 田川 徹平(関東労災病院消化器内科)
共同演者 馬場 俊之(関東労災病院消化器内科), 中崎 奈都子(関東労災病院消化器内科), 大石 千歳(関東労災病院消化器内科), 嘉戸 慎一(関東労災病院消化器内科), 金子 麗奈(関東労災病院消化器内科), 金 民日(関東労災病院消化器内科), 草柳 聡(関東労災病院消化器内科), 小川 正純(関東労災病院消化器内科), 佐藤 譲(関東労災病院消化器内科), 米山 さとみ(関東労災病院消化器外科), 秀村 晃生(関東労災病院消化器外科), 石丸 正寛(関東労災病院消化器外科)
抄録 【症例】34歳女性。【現病歴】2009年頃から強い下腹部痛を繰り返していた。便塊停滞による弛緩性便秘と診断されていたが、内服治療で症状は軽快していた。2013年2月、強い腹痛と腹部膨満感を主訴に近医を受診し、腹部超音波で小腸の拡張が認められ、腸閉塞を疑われ当院を受診した。【入院後経過】理学的に腹膜刺激症状はなく、強い腹痛と腹部膨満を認めた。血液検査では炎症反応は認められず、CPK、LDHも正常であった。腹部造影CTでは便塊貯留により著明に拡張した腸管が認められ、一方は虚脱し渦巻状に走行して上行結腸に連続し、もう一方は盲端に終わり、連続して虫垂と思われる管腔構造が認められ、盲腸軸捻転症と診断した。腸管壊死や穿孔を疑う所見はなく、患者の希望により内視鏡的整復術を考慮した。しかし強い腹痛と腹部膨満により安静が困難であり、穿孔の危険性もあることから手術療法を選択し、捻転解除術、回盲部切除術を行った。切除標本では粘膜下層に軽度浮腫を認めるものの、明らかな穿孔や壊死所見はなく、悪性を示唆する所見も認められなかった。術後経過は良好のため、第7病日に退院した。【考察】盲腸捻転症は比較的稀な疾患であり、その発生頻度は全腸閉塞の0.4~1.0%とされ、また結腸軸捻転症のうち4~10%程度と報告されている。盲腸軸捻転は移動性盲腸に長軸方向の捻転が加わり発症する。腸管の癒着、索状物などを背景に、内容物が停滞した盲腸が、嘔吐、外傷、咳嗽、跳躍などを契機に捻転することにより発症する。本症例も腹部手術歴があり、多量の便塊貯留が認められており、何らかの作用が加わり盲腸軸捻転を発症したと考えられる。これまで盲腸軸捻転症は術前診断が困難であったが、MDCTの普及により術前位に確定診断に至る症例も散見される。治療には内視鏡による整復も報告されているが、再発や整復時の腸管穿孔も指摘されており、外科的治療が選択されることが多い。今回、術前CTで診断に至り、外科的治療により軽快した盲腸軸捻転の1例を経験したので、若干の文献的考察を加えて報告する。
索引用語 盲腸軸捻転, 術前診断