セッション情報 研修医セッション(卒後2年迄)

タイトル 048:

PTHrP産生および門脈腫瘍塞栓を伴った肝腫瘍の一例

演者 菱川 彰人(東京都済生会中央病院消化器内科)
共同演者 松崎 潤太郎(東京都済生会中央病院消化器内科), 向井 清(東京都済生会中央病院病理診断科), 二宮 浩範(東京都済生会中央病院病理診断科DELIMITER公益財団法人がん研究会がん研究所病理部), 星野 舞(東京都済生会中央病院消化器内科), 瀧田 麻衣子(東京都済生会中央病院消化器内科), 石山 由佳(東京都済生会中央病院消化器内科), 岸野 竜平(東京都済生会中央病院消化器内科), 岩崎 栄典(東京都済生会中央病院消化器内科), 泉谷 幹子(東京都済生会中央病院消化器内科), 中澤 敦(東京都済生会中央病院消化器内科), 塚田 信廣(東京都済生会中央病院消化器内科)
抄録 【症例】92歳女性。来院3日前より徐々に進行した意識障害を主訴に来院した。来院時、意識障害(JCS II-10)、高カルシウム血症(Ca 14.6 mg/dL、補正Ca 15.4 mg/dL)、肝胆道系酵素上昇(総ビリルビン 5.2 mg/dL)を認め、腹部CT検査で胸腹水貯留、肝硬変および多発肝腫瘤・門脈塞栓が疑われ、同日緊急入院した。高カルシウム血症は腫瘍からのPTHrP産生(12.8 pmol/L)によるものと考えられ、細胞外液の大量輸液およびゾレドロン酸投与を実施したところ、入院5日目には高カルシウム血症の改善とともに意識障害も軽快した。AFP 62970 ng/mL, PIVKA-II 133560 mAU/mLと著明高値であり門脈腫瘍塞栓を伴っている点より、多発肝腫瘤は肝細胞癌を疑った。患者および家族は積極的な治療を希望せず、胸腹水貯留・低アルブミン血症に対し、利尿剤およびアルブミンの補充による支持療法を行った。病状は比較的安定的に推移していたが、入院29日目に菌血症を発症し、抗菌薬投与にて一時炎症所見など改善するも入院35日目より尿量が急速に減少し、入院37日目に死亡した。病理解剖を実施したところ、背景肝に明らかな肝硬変は認めず、肝腫瘤は肝細胞癌ではなく形態的には低分化腺癌に相当し、CK7陰性である点などが非典型的ではあるが、総合的に判断して胆管細胞癌と診断した。著明な脈管浸潤像を示し、門脈内腫瘍塞栓は脾静脈内まで進展していた。【考察】本症例は、PTHrP高値であり病理解剖の結果でも骨転移は認められず、intact PTHは8 pg/mLと抑制されていた点より、腫瘍随伴体液性高カルシウム血症(humoral hypercalcemia of malignancy;HHM)にて意識障害をきたしたものと考えられた。臨床的には肝細胞癌との鑑別は困難であったが、病理所見より胆管細胞癌と診断された。PTHrP産生性胆管細胞癌は非常に稀(pubmedおよび医中誌で検索しうる和文・英文での報告例はこれまでに16例のみ)ではあるが、高カルシウム血症の鑑別疾患の一つとして念頭に置く必要があると考えられた。【結論】PTHrP産生および門脈腫瘍塞栓を伴った、胆管細胞癌としては稀な症例を経験した。
索引用語 胆管細胞癌, PTHrP