セッション情報 研修医セッション(卒後2年迄)

タイトル 049:

異時性に認めた4重癌(肝細胞癌、肝内胆管癌、肝原発神経内分泌腫瘍、胃癌)の一例

演者 井上 剛志(東京医科歯科大学附属病院 消化器内科)
共同演者 加納 嘉人(東京医科歯科大学附属病院 消化器内科), 浅野 侑(東京医科歯科大学附属病院 消化器内科), 竹中 健人(東京医科歯科大学附属病院 消化器内科), 和田 祥城(東京医科歯科大学附属病院 消化器内科), 藤井 俊光(東京医科歯科大学附属病院 消化器内科), 井津井 康浩(東京医科歯科大学附属病院 消化器内科), 大島 茂(東京医科歯科大学附属病院 消化器内科), 中川 美奈(東京医科歯科大学附属病院 消化器内科), 柿沼 晴(東京医科歯科大学附属病院 消化器内科), 東 正新(東京医科歯科大学附属病院 消化器内科), 大岡 真也(東京医科歯科大学附属病院 消化器内科), 長堀 正和(東京医科歯科大学附属病院 消化器内科), 荒木 昭博(東京医科歯科大学附属病院 消化器内科), 大塚 和朗(東京医科歯科大学附属病院 消化器内科), 朝比奈 靖浩(東京医科歯科大学附属病院 消化器内科), 渡辺 守w(東京医科歯科大学附属病院 消化器内科), 工藤 篤(東京医科歯科大学附属病院 肝胆膵・総合外科), 田邉 稔(東京医科歯科大学附属病院 肝胆膵・総合外科), 桐村 進(東京医科歯科大学附属病院 病理科), 明石 巧(東京医科歯科大学附属病院 病理科)
抄録 【症例】73歳男性【主訴】上腹部痛【既往歴】脳梗塞【家族歴】父、母:癌(詳細不明)、兄:食道癌【現病歴】2010年10月造影CT検査にて肝右葉に2ヶ所の濃染される腫瘍を認め当院外科にて肝後区域切除術施行。術後病理診断では肝細胞癌、肝内胆管癌の重複癌であった。2011年11月に2ヶ所の再発を認め、生検にてHCCと診断しRFAを施行した。2012年9月造影CTにて肝S7にリング上に造影される40mm大の腫瘍と下大静脈背側にリンパ節腫大を認め、肝内胆管癌再発と診断。さらに上部消化管内視鏡にて胃体下部大弯側に陥凹性病変を認め生検にて高分化腺癌であった。同年10月肝前腹則区域切除、リンパ節切除術ならびに幽門側胃切除術を施行した。病理診断にて肝腫瘍はCD56(+)、CgA(+)、synaptophysin(+)、Ki67 30%であり、腺癌成分の混在を認めるNeuroendocrine carcinoma(NEC)の診断であり、胃腫瘍はtub1であった。本症例では上下部消化管内視鏡、PET-CTにおいて肝臓以外に原発と考えられる病変はなく肝臓原発NECと診断した。2013年3月多発肝内再発、腹膜播種、多発リンパ節転移を認めNEC再発と判断しエベロリムス内服、オクトレオチド投与としたが病変の増大、全身状態の悪化を認め7月緩和ケア科へ転院となった。【考察】4重癌の症例は散見されるが、肝癌における重複癌は少ないとされる。特に本症例は肝臓原発NECを併発しており、肝臓原発NECは本邦において27例の報告しかない。一方で肝細胞癌、肝内胆管癌の両者との合併例の報告は皆無であり、さらに本症例では胃癌の合併もみられ非常に稀な一例を経験した。重複癌においてはがん抑制遺伝子であるp53変異が起きることが報告されており、本症例においても考察を加える。さらに文献的に肝細胞癌や肝内胆管癌からの神経内分泌分化を示唆する報告が散見されるが直接的な証明はされていない。本症例は腺癌成分とNECが混在し、両者の中間的な組織像であるCD56(+)の腺癌成分を認めており、癌細胞分化の生物学的知見に関しても非常に重要な所見と考えられ報告する。
索引用語 神経内分泌腫瘍, 重複癌