セッション情報 一般演題

タイトル 078:

意識障害を伴った糞線虫症の一例

演者 三浦 邦治(さいたま市立病院 内科)
共同演者 金田 浩幸(さいたま市立病院 消化器内科), 辻 忠男(さいたま市立病院 消化器内科), 加藤 まゆみ(さいたま市立病院 消化器内科), 柿本 年春(さいたま市立病院 内科), 桂 英之(さいたま市立病院 消化器内科), 篠崎 博志(さいたま市立病院 消化器内科), 水谷 友美(さいたま市立病院 内科), 宮永 亮一(さいたま市立病院 内科), 松波 幸寿(さいたま市立病院 消化器内科)
抄録 【症例】81歳、女性【主訴】食思不振【既往歴】50歳乳癌で手術、65歳くも膜下出血で手術【家族歴】特記事項なし【生活歴】戦時中にフィリピンで生まれ、戦後成人になるまで沖縄で生活していた。【現病歴】平成24年6月食思不振、意欲低下があり、心療内科を受診した。うつ病と診断され、抗うつ薬が処方されたが、改善しないため、内科を受診した。上部消化管内視鏡検査を施行し、急性胃粘膜病変と診断され、PPI、胃粘膜保護剤を処方された。内服するも改善せず、嘔気も伴ってきたため、9月当院外来受診し、精査加療目的に入院となった。【入院後経過】上部消化管内視鏡を施行し、十二指腸下行脚に粘膜の肥厚、白色絨毛を認め、生検を施行した。腹部造影CTで十二指腸、小腸壁の肥厚を認めた。入院後ほとんど食事がとれず、実の娘がわからなくなるほど意識状態が悪化した。頭部CTや髄液検査では異常はなかった。十二指腸粘膜の生検の結果で、腺管内腔や上皮内に虫体を多数認めた。また、便中の顕微鏡像で、多数の糞線虫を認め、糞線虫症と診断し、イベルメクチンを診断日と2週間後の2回内服した。イベルメクチン内服2日後よりまったくとれなかった食事が徐々にとれるようになり、意識状態も改善、退院時には食事はほぼ全量摂取できるまで回復した。HTLV-1は陽性であった。退院1ヶ月後の上部消化管内視鏡では、十二指腸下降脚の粘膜の改善を認め、生検では糞線虫を認めなかった。【考察】食思不振を主訴に受診し、十二指腸粘膜生検で糞線虫症と診断した症例を経験した。糞線虫は経皮感染し、血中に移行し、肺の毛細血管を突き破って気管に入り、その後嚥下されて消化管に入り、上部小腸に達する。頻度は低いが、消化器症状を呈し、十二指腸粘膜に粘膜変化を認める場合は、糞線虫症も鑑別にいれ、生検する必要があると考える。
索引用語 糞線虫症, イベルメクチン