セッション情報 一般演題

タイトル 085:

口内炎、陰部潰瘍の発症後中毒性巨大結腸症に至った1例

演者 藤原 利成(社会保険中央総合病院)
共同演者 河口 貴昭(社会保険中央総合病院), 酒匂 美奈子(社会保険中央総合病院), 吉村 直樹(社会保険中央総合病院), 高添 正和(社会保険中央総合病院)
抄録 【症例】39歳、男性【現病歴】既往歴なく突然の下痢・血便で発症。排便回数は1日4行程度であった。その後約1週間のうちに口内炎の悪化、持続的高熱を認めるようになり近医を受診。CRP22mg/dlと高値であったため緊急入院となった。入院後陰嚢に潰瘍を認め、口内炎と併せてベーチェット病が疑われたため精査目的で当院に転院となった。【臨床経過】入院時、打ち抜き様の口内潰瘍が下唇、舌に複数認められた。陰嚢潰瘍は5mm大の円形様で疼痛は認めなかった。眼科精査、皮膚や関節所見では異常を認めなかった。以上より不全型ベ-チェット病における腸管型ベ-チェット病が疑われた。転院日より38℃超の発熱及びCRP高値が継続し、排便回数は5行/日程度で少量の血便が持続した。診断目的の検査を続けていたところ、転院5日目に腹部膨満感の悪化があり、腹部単純X線検査で径6cm以上の中毒性巨大結腸様の所見を認めた。腹膜炎所見は認めなかったため、抗生剤、ステロイドパルスを開始して、翌日緊急直腸内視鏡を施行した。直腸から連続性の深掘れ潰瘍を認め、潰瘍性大腸炎(以後UC)が強く疑われる所見であった。そのため、同病による中毒性巨大結腸症を強く疑い緊急手術を施行した。手術標本では直腸から上行結腸まで連続性病変を認め、一部は粘膜が脱落し、筋層が菲薄化していた。病理検査は、UCに合致する組織像であった。【考察】中毒性巨大結腸症を発症したUCであったが、入院時腹部症状に重篤感がなかったこと、口内潰瘍や陰部潰瘍といったベーチェット病を疑わせる症状のあったことが、診断の遅れにつながってしまった。ベーチェット病に対して外科的切除が行われた場合、術後に潰瘍が吻合部付近に再発し、潰瘍が難治性で再手術されることが多い。そのため、術式に関しても確定診断が非常に重要になる。本症例は直腸内視鏡からUCと診断し、開腹所見も全大腸型のUCに矛盾しない所見であったため、大腸全摘を施行し、病理所見もUCと合致した。口内炎、陰部潰瘍を発症し、中毒性巨大結腸症に至ったUCの1例を経験したので報告する。
索引用語 中毒性巨大結腸症, 陰部潰瘍