セッション情報 一般演題

タイトル 088:

突然発症し結腸亜全摘にて改善した結腸限局型偽性腸閉塞の1例

演者 大久保 秀則(横浜市立大学 医学部 消化器内科)
共同演者 中島 淳(横浜市立大学 医学部 消化器内科), 河原 弥生(板橋区医師会病院 外科), 西田 茂(板橋区医師会病院 外科)
抄録 【背景】慢性偽性腸閉塞症(CIPO)は器質的疾患がないのにもかかわらず腸閉塞所見を呈する難治性疾患であり、下部消化管機能性異常の中で最も重篤な疾患である。今回我々は、突然発症し結腸亜全摘にて改善した結腸限局型偽性腸閉塞の1例を経験したので報告する。【症例】78歳女性。58歳時に子宮脱による子宮全摘術の既往がある。2013年5月14日突然腹痛が出現し、15日に嘔吐・経口摂取不可となった。17日に近医で腸閉塞と診断され紹介された。来院時画像検査で小腸と大腸の著明拡張を認め、経鼻的にイレウス管を挿入。その後症状は改善し、器質的閉塞機転のないことを確認後24日にイレウス管を抜去。25日にシネMRIを施行し、小腸拡張は若干認められたが小腸蠕動は比較的保たれていた。26日から経口摂取を開始したが、その後腹部膨満が目立つようになり、6月1日再度イレウス管挿入を必要とした。小腸減圧だけでは改善なく翌2日、経肛門的イレウス管を挿入するも症状改善は得られずに結腸の拡張が進行した。保存的加療の限界と判断し、6月4日(第22病日)大腸亜全摘術+回腸瘻造設術を施行した。その後経口摂取可能となり経過順調にて7月12日(第60病日)に退院した。【考察】CIPOは著明な腸管拡張を来すことが多く、結腸限局型であれば手術療法が有用とされるが小腸が罹患部位に含まれる場合、安易な手術はむしろ症状増悪を招いてしまうことが多いとされている。従って小腸の運動異常の有無が手術適応を決める重要な因子である。本症例は症状出現まで精査をしておらず結腸拡張がいつから起こっているかは不詳であるが、癒着等の結腸の器質的な原因なく腸閉塞症状を繰り返したために偽性腸閉塞症と診断した。小腸拡張を認めたがシネMRIにより小腸蠕動は保たれていることが分かり、結腸限局型と診断した。本疾患の手術適応に関しては極めて慎重を要するが、本症例はシネMRIが診断に奏功し、さらに適切な手術療法に結びついた貴重な1例であった。病理学的な解析も含めて発表する。
索引用語 結腸限局型偽性腸閉塞, 結腸亜全摘術