セッション情報 研修医セッション(卒後2年迄)

タイトル 047:

横行結腸胃瘻を合併した潰瘍性大腸炎の1例

演者 西山 邦幸(横浜市立市民病院 外科)
共同演者 辰巳 健志(横浜市立市民病院 外科), 二木 了(横浜市立市民病院 外科), 黒木 博介(横浜市立市民病院 外科), 小金井 一隆(横浜市立市民病院 外科), 杉田 昭(横浜市立市民病院 外科)
抄録 症例は42歳男性.2008年4月に下痢,血便,腹痛が出現,痔瘻の手術歴からクローン病が疑われた.5-ASA製剤,プレドニゾロン(PSL)の内服で寛解したものの,その後再燃を繰り返した.同年,左下腿に壊疽性膿皮症を発症し,免疫調節薬の内服で改善した.2012年4月に下痢,血便,貧血,関節炎を認め,精査で潰瘍性大腸炎と診断が変更された.PSL内服と顆粒球除去療法で腹部症状は改善したが,右大腿に壊疽性膿皮症が再燃した.タクロリムスで一旦改善したが,減量で腸管病変が再燃し,増量で腎機能障害をきたしたため手術を希望され,当科に紹介受診した.大腸内視鏡検査では全大腸にわたり,びまん性に発赤,びらんを認め,ハウストラが消失し,炎症性ポリープの多発を認めたが,回腸末端の異常所見や縦走潰瘍はなかった.注腸造影検査で横行結腸脾彎曲部に瘻孔が描出され,腹部造影CT検査で横行結腸と胃の間に瘻孔を認めた.2013年6月に手術を施行.術中所見では全大腸に炎症に伴う棍棒状の肥厚があり,横行結腸脾彎曲部と胃体部大弯側後壁に瘻孔を認めたが,小腸に異常所見はなかった.クローン病も完全に否定できなかったため,結腸亜全摘,回腸人工肛門造設,S状結腸粘液瘻造設,胃部分切除術を施行した.切除標本の肉眼所見では結腸にはびまん性に浅いびらんと多発する炎症性ポリープがあり,横行結腸に胃との間に瘻孔を認めたが縦走潰瘍はなかった.病理組織学検査では粘膜固有層までの軽度の炎症所見,陰窩膿瘍を認め,非乾酪性類上皮肉芽腫,amputation neuromaは認められず,潰瘍性大腸炎と診断した.胃と横行結腸には瘻孔が形成され,瘻孔内には胃底腺の腸側への伸展を認めた.潰瘍性大腸炎にも稀ではあるが他臓器に瘻孔を形成することがある.瘻孔を合併した潰瘍性大腸炎の手術を行う際にはindeterminate colitisに準じて結腸亜全摘術を行い、病理学的所見を併せて診断して二期目以降の術式を選択すべきである.
索引用語 潰瘍性大腸炎, 瘻孔