セッション情報 研修医セッション(卒後2年迄)

タイトル 041:

抗血栓療法中に発症した食道・胃粘膜下血腫の1例

演者 関谷 真志(前橋赤十字病院 消化器内科)
共同演者 上野 敬史(前橋赤十字病院 消化器内科), 安達 拓也(前橋赤十字病院 消化器内科), 須賀 孝慶(前橋赤十字病院 消化器内科), 長坂 昌子(前橋赤十字病院 消化器内科), 関口 雅則(前橋赤十字病院 消化器内科), 佐藤 洋子(前橋赤十字病院 消化器内科), 大塚 修(前橋赤十字病院 消化器内科), 田原 博貴(前橋赤十字病院 消化器内科), 飯塚 賢一(前橋赤十字病院 消化器内科), 豊田 満夫(前橋赤十字病院 消化器内科), 新井 弘隆(前橋赤十字病院 消化器内科), 高山 尚(前橋赤十字病院 消化器内科), 阿部 毅彦(前橋赤十字病院 消化器内科)
抄録 【症例】70歳,男性。【主訴】黒色便。【現病歴】2013年7月某日,夕食時に心窩部痛あり。冷凍してあった饅頭を嚥下した際に力が入り,その後から疼痛が出現した。翌日の朝には心窩部痛軽快したが黒色便あり。近医受診し,緊急上部消化管内視鏡検査にて,噴門直下に血腫を認めた。同日,精査加療目的で当院紹介され入院となった。【既往歴】高血圧,脂質異常症,狭心症(PCI後)。【内服歴】アスピリン,ニソルジピン,ロスバスタチンカルシウム,テルミサルタン,セレコキシブ,クラリスロマイシン。【嗜好歴】機会飲酒,喫煙なし。【入院後経過】緊急上部消化管内視鏡検査にて,中部食道から胃体中部小弯にかけて縦走する粘膜下血腫があり,噴門直下に凝血塊の付着を伴う隆起性病変を認めた。CT上,食道破裂や穿孔などは否定的であり,食道・胃粘膜血腫と診断し,抗血栓薬の中止,禁食,補液,PPI,粘膜保護剤により治療開始した。その後,吐下血なく経過。第8病日には噴門直下の血腫は消失し,粘膜脱落を伴う潰瘍形成を認めた。創部は治癒傾向であり食事再開後も悪化なく,第16病日に退院となった。【考察】食道粘膜下血腫は最初に1957年Williamsが特発性食道裂傷として報告している。自覚症状は胸痛・心窩部痛,嚥下障害,嘔気・嘔吐等で,治療は絶食・粘膜保護剤投与等が行われており一般に予後良好である。成因としては,外傷性,特発性に分類される。前者は異物,外傷,嘔気・嘔吐などによる機械的刺激によるものであり,後者は抗血栓療法,肝硬変,血液疾患等の出血性素因を背景に発症する。近年,我が国では高齢化に伴い脳・心血管疾患が増加し,抗血栓療法を行っている症例が増加している。食道粘膜下血腫の報告でも抗血栓療法中の症例が多く見られ,今後も発症増加が予測される。今回,抗血栓療法を背景とし,食事内容による機械的刺激が誘因となった食道・胃粘膜下血腫の1例を経験したため報告する。
索引用語 食道・胃粘膜下血腫, 抗血栓療法