セッション情報 専修医セッション(卒後3-5年)

タイトル 027:

ワクチン接種が誘因となった急性肝不全の一例

演者 林 将史(昭和大学藤が丘病院消化器内科)
共同演者 井上 和明(昭和大学藤が丘病院消化器内科), 山村 詠一(昭和大学藤が丘病院消化器内科), 五味 邦代(昭和大学藤が丘病院消化器内科), 高野 祐一(昭和大学藤が丘病院消化器内科), 高橋 寛(昭和大学藤が丘病院消化器内科)
抄録 【はじめに】ウイルス疾患の予防にワクチン接種は不可欠であるが、持続感染するウイルスの一部には自己免疫性疾患を惹起するものが知られている。 今回HPVワクチン接種後に重症の自己免疫性肝炎を発症し、経過中に肝性昏睡を併発して急性肝不全昏睡型となった一例を経験したので報告する。 【症例】16歳の女性で元来健康であった。夏休み前にHPVのワクチンを接種し夏休みに3週間ほどアメリカに留学した。 帰国後より倦怠感を自覚したが放置していた。 発症から6日後に父親に黄疸を指摘され、当院ER受診となった。外来での採血で急性肝炎が疑われたため(AST 848U/l、ALT 1181U/l、T-Bil 4.7mg/dl)、当院消化器内科へ入院となった。検索の結果既知のウイルスマーカーはすべて陰性であったが抗核抗体が320倍でHPVワクチンに対するDLSTは陽性であった。入院後はじめの2週間は家族の希望がありステロイドは使用せず、ウルソとSNMCだけで経過観察を行った。トランスアミナーゼは順調に低下したが、総ビリルビン値は5mg/dl、プロトロンビン時間はINR 1.5前後で遷延し回復傾向を示さず与芝の予知式のZ値も増加傾向を示した。 そこで家族を説得して第15病日よりステロイドパルス療法を開始した。 全身状態は良好で食欲も旺盛であったが、第18病日に肝性昏睡に陥りIV度まで増悪したがOnline HDFによる人工肝補助療法により意識を回復した。 回復後の第44病日の肝生検組織もcollapseと再生像がみられ自己免疫性肝炎の回復期に一致する所見であった。【結論】持続感染するウイルスに対するワクチンの接種は自己免疫性疾患を惹起する可能性を否定できず、ワクチン接種後の肝障害は自己免疫性肝炎の可能性も考えて診療に当たる必要がある。
索引用語 HPVワクチン, 自己免疫