セッション情報 専修医セッション(卒後3-5年)

タイトル 034:

超音波内視鏡下ドレナージを要した慢性膵炎・膵仮性嚢胞の一例

演者 村川 綾(せんぽ東京高輪病院 消化器内科)
共同演者 笹平 直樹(せんぽ東京高輪病院 消化器内科), 黒田 高明(せんぽ東京高輪病院 消化器内科), 田上 靖(せんぽ東京高輪病院 消化器内科), 下田 浩輝(せんぽ東京高輪病院 消化器内科), 中野 利香(せんぽ東京高輪病院 消化器内科), 前川 久登(せんぽ東京高輪病院 消化器内科), 与芝 真彰(せんぽ東京高輪病院 消化器内科)
抄録 【症例】 症例は46歳男性。2012年1月にアルコール性急性膵炎で1週間の入院歴あり。2013年2月、腹痛を主訴に当院初診。CT上、Groove領域の炎症の他、膵頭部に4cm大の仮性嚢胞、体尾部主膵管の拡張を認め、急性膵炎(慢性膵炎増悪)及び仮性嚢胞と診断したが、超音波内視鏡(EUS)では嚢胞内に壁在結節様の所見が見られ、分枝型膵管内乳頭粘液性腫瘍(IPMN)との鑑別を要した。内視鏡的逆行性胆管膵管造影(ERCP)では、乳頭に異常を認めず、頭部主膵管の非常に強い狭窄と尾側膵管の拡張が見られ、嚢胞と主膵管に明らかな交通は認めなかった。保存的加療で症状は軽快したが、同4月に腹痛再発で再入院となった。病態として、頭部主膵管狭窄に伴う膵液うっ滞を背景とした尾側膵管の拡張および仮性嚢胞と考え、膵管ステント治療を行う方針としたが、初回ERCPの所見から、膵管ステント留置に関して困難が予想された。このため、まず、頭部の仮性嚢胞について、IPMNを完全否定する目的および仮性嚢胞であればその縮小効果を期待して、EUS-FNAを施行:薄黒色調で非粘液性の膵液(細胞診Class II)が吸引され、嚢胞腔の完全消失が得られた。翌日のERCP時には、頭部主膵管狭窄は残存していたもののカテーテルの通過は容易であり、7Fr膵管ステントの留置に成功した。しかし、2日後より腹痛の再燃および白血球・CRPの上昇とともに、仮性嚢胞の再増大が確認された。このため、仮性嚢胞に対して、7FrステントによるEUS下経十二指腸的ドレナージを追加した。この際には初回FNAの時とは異なり、灰白色調の膿汁が吸引された。その後、症状は速やかに改善し、3ヶ月後に両ステントとも抜去した。【考察】慢性膵炎に伴う仮性嚢胞の多くは膵液のうっ滞を背景としており、特に膵頭部領域の非感染性の仮性嚢胞に対しては膵管減圧が奏功することが多い。一方、仮性嚢胞に対する一回吸引法の効果は確認されていない。本症例では両者を組み合わせることにより、より低侵襲の治療を目指したが、結局、EUS-FNA後の仮性嚢胞感染により、その直接ドレナージも必要であった。
索引用語 膵仮性嚢胞, 超音波内視鏡下嚢胞ドレナージ術