セッション情報 一般演題

タイトル 100:

ミリプラチンによる肝動脈化学塞栓療法後に薬剤起因性の免疫性溶血性貧血を合併した一例

演者 深澤 友里(杏林大学医学部付属病院 消化器内科)
共同演者 關 里和(杏林大学医学部付属病院 消化器内科), 奥山 秀平(杏林大学医学部付属病院 消化器内科), 斉藤 大祐(杏林大学医学部付属病院 消化器内科), 山田 雄二(杏林大学医学部付属病院 消化器内科), 徳永 健吾(杏林大学医学部付属病院 消化器内科), 森 秀明(杏林大学医学部付属病院 消化器内科), 高橋 信一(杏林大学医学部付属病院 消化器内科)
抄録 症例は70歳代女性.顕微鏡的多発血管炎にて当院膠原病科通院中であった.経過中に肝胆道系酵素の上昇を認め,改善を認めないため腹部CT検査を施行した所,肝内に多発腫瘍が認められ当科紹介受診.腫瘍マーカーではAFP 9468ng/mlと異常高値であったがCA19-9も48.7U/mlと高値であり血液検査,画像検査での診断が困難であったため,確定診断のため超音波下肝腫瘍生検を施行.腫瘍組織診断ではHepatocellar carcinomaであった.背景肝の病理所見では軽度のリンパ球浸潤を認めるのみで線維増生は認めなかったが,HBs抗体・HBe抗体・HBc抗体のいずれも陽性で既感染パターンである事やその他の肝疾患は否定的である事からB型肝炎ウイルス関連肝細胞癌と診断した.多発腫瘍であるため肝動脈化学塞栓療法(TACE)の適応と判断しミリプラチンを用いたTACEを施行.術直後は軽度の肝障害を認めるのみであったが,術後5日目より急激な進行性の貧血が出現.出血性貧血を疑い上下部消化管内視鏡,体幹部CTでの検索を行ったが出血性病変は確認できなかった.血液検査上直接クームス試験が陽性であり,網赤血球数増加,ハプトグロビン低下,LDHの上昇が見られ,骨髄検査でも異常は認めない事から自己免疫性溶血性貧血を疑った.プレドニゾロン40mg(1mg/kg)での治療を開始.治療開始後は貧血の進行は徐々に緩やかになり,プレドニゾロン漸減の上退院とした.続発性溶血性貧血の原因としてはリウマチ性疾患,リンパ増殖性疾患,免疫不全症,腫瘍,感染,薬剤起因性がある.本症例は基礎疾患として顕微鏡的多発血管炎,肝細胞癌を認めたが,ミリプラチンによる治療から数日後に溶血性貧血を発症していることよりミリプラチンによる薬剤起因性免疫性溶血性貧血と考えた.白金製剤による免疫性溶血性貧血は数例の報告があるが,検索した範囲でミリプラチンによる免疫性溶血性貧血の報告例はなく,若干の文献的考察を加えて報告する.
索引用語 肝動脈化学塞栓療法, 肝細胞癌