セッション情報 一般演題

タイトル 49:

高度の内部壊死により術前診断が困難であった直腸癌転移性肝腫瘍の1例

演者 清水 徹一郎(自治医科大学 消化器一般外科)
共同演者 歌野 健一(福島県立医科大学会津医療センター 小腸大腸肛門科放射線科), 巷野 佳彦(自治医科大学 消化器一般外科), 鯉沼 広治(自治医科大学 消化器一般外科), 宮倉 安幸(自治医科大学 消化器一般外科), 佐久間 康成(自治医科大学 消化器一般外科), 堀江 久永(自治医科大学 消化器一般外科), 安田 是和(自治医科大学 消化器一般外科), 今田 浩生(自治医科大学 病理診断部), 田中 亨(自治医科大学 病理診断部)
抄録 大腸癌肝転移巣は、画像所見では造影CT(門脈相)での辺縁部にリング状造影効果を示す腫瘤影、MRI(Gd-EOB-DTPA:肝細胞造影相のT1強調像)での低信号の腫瘤影、またPETでの原発巣と同様な異常集積像を特徴とする。今回、画像診断で非特徴的所見を示した直腸癌同時性肝転移症例を経験したので報告する。症例は46歳、女性。直腸癌同時性肝転移の診断で手術目的当科紹介となる。既往歴として更年期障害に対するホルモン療法治療歴を認めHBV無症候性キャリアであった。大腸内視鏡では、肛門縁から8cmの直腸(Ras)左側壁に、2/3周性の2型病変を認め、生検ではadenocarcinoma (tub2)であった。CTではやや低吸収で比較的境界明瞭な腫瘤を認め、造影により周囲に被膜様構造を認めた。腹部超音波では境界明瞭で内部均一なhaloを伴う高エコー腫瘤を認めた。直腸癌肝転移を疑いMRIとPETを施行した。MRIでは周囲に被膜様構造を伴い内部信号は不均一、T2強調で著明な低信号を示す腫瘤を認めた。また造影効果を認めず、拡散強調像では軽度の低信号を示していた。PETでは直腸原発巣に比較し肝腫瘤は辺縁に軽度の集積があるのみで内部集積は認めなかった。転移性肝腫瘍としては非典型的であり、肝腺腫の内部出血、肝膿瘍、嚢胞腺腫、complicated cystが鑑別として挙げられた。診断を兼ね直腸と同時切除を施行した。肝腫瘍は大きさ5cm、被膜形成を伴い黄色調で一部に出血を認めた。組織学的には線維性被膜に囲まれ、中心部は大半が壊死、腫瘤の辺縁付近に円柱状の異形細胞が不整な腺管構造を形成し増殖。腺癌(tub1>tub2)の所見で、直腸癌の転移と診断した。転移性肝腫瘍内部が高度壊死変化を起こした事により、各種画像所見が非特徴的なものとなり術前診断を難しくしていたと考えられた。
索引用語 転移性肝腫瘍, 術前診断困難