セッション情報 一般演題

タイトル 50:

後腹膜原発炎症性線維肉腫の一例

演者 平山 みどり(日本大学医学部内科学系消化器肝臓内科学分野)
共同演者 中河原 浩史(日本大学医学部内科学系消化器肝臓内科学分野), 宮田 隆(日本大学医学部内科学系消化器肝臓内科学分野), 高橋 利実(日本大学医学部内科学系消化器肝臓内科学分野), 松岡 俊一(日本大学医学部内科学系消化器肝臓内科学分野), 小川 眞広(日本大学医学部内科学系消化器肝臓内科学分野), 森山 光彦(日本大学医学部内科学系消化器肝臓内科学分野), 中田 泰彦(みつわ台総合病院外科), 小林 槙雄(みつわ台総合病院病理診断科)
抄録 【緒言】炎症性線維肉腫(Inflammatory fibrosarcoma:IF)は比較的新しい疾患概念であり、本邦での報告は数例のみである。今回我々は急速増大した後腹膜原発IFを経験したので報告する。【症例と経過】70歳男性。アルコール性肝硬変、高血圧症で通院中に腹部膨満感が出現してきたため外来受診した。腹部CTで後腹膜に巨大な腫瘍性病変を認め、精査加療目的に入院した。造影CTでは後腹膜に直径約13cmの内部不均一で血流豊富な腫瘍を認めた。各種画像検査を行ったが確定診断には至らず、腹腔鏡下腫瘍生検を施行したところ、大網に大小の結節を形成する腫瘍を認め、同部位からの腫瘍生検でIFの診断となった。しかし、全身状態が急激に悪化したため治療は行えず、約2週間後に永眠された。病理解剖の結果は後腹膜原発炎症性線維肉腫、広範腹膜浸潤であった。【考察】IFは1991年にMeis&Enzingerにより新たに定義された、従来炎症性偽腫瘍と診断されてきた疾患群のうちsarcomaとして位置付けられた極めて稀な疾患である。画像で診断を確定することは困難で、最終診断は病理組織でされる。その特徴は増殖する線維芽細胞と筋線維芽細胞が束状ないし花むしろ状に配列し、しばしば隣接する臓器に浸潤し侵襲性が強い。治療は外科的切除が第一選択であり、放射線療法や化学療法は確立されていない。本症例では根治切除は困難であったため、化学療法を考慮したが腫瘍の急速増大、腹水貯留や全身状態の悪化により残念ながら治療を行うことはできなった。定期的に行っていた画像検査では指摘されていなかったことから、腫瘍は急速に増大したものと考えられた。Anaplstic lymphoma kinase(ALK)陽性の症例では分子標的薬が奏功した報告もみられるが、本症例では陰性であった。【結語】急速増大した後腹膜原発IFを経験したので報告した。
索引用語 炎症性線維肉腫, Inflammatory fibrosarcoma