セッション情報 | 研修医セッション(卒後2年迄) |
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タイトル | 72:メシタット®(カモスタットメシル酸塩)による重症薬剤性肝障害の1例 |
演者 | 内田 晶子(聖マリアンナ医科大学病院) |
共同演者 | 重福 隆太(聖マリアンナ医科大学病院), 松永 光太郎(聖マリアンナ医科大学病院), 加藤 正樹(聖マリアンナ医科大学病院), 野口 陽平(聖マリアンナ医科大学病院), 初谷 守朗(聖マリアンナ医科大学病院), 池田 裕喜(聖マリアンナ医科大学病院), 松本 伸行(聖マリアンナ医科大学病院), 奥瀬 千晃(聖マリアンナ医科大学病院), 鈴木 通博(聖マリアンナ医科大学病院), 伊東 文生(聖マリアンナ医科大学病院) |
抄録 | 症例は62歳、女性。主訴は全身倦怠感。2012年12月初旬にエソメプラゾール、ソファルコン、モサプリドクエン酸塩が近医より処方された。2013年1月初旬より胃炎に対してカモスタットメシル酸塩(メシタット®)が追加処方された。メシタット®内服開始1週後に尿の黄染を認めたが、そのまま4月初旬まで内服を継続した。4月初旬より倦怠感が出現し4月末に当院受診、急性肝障害の診断にて入院となった。1990年に胆嚢腺筋症で胆摘の既往あり。飲酒歴なし、輸血歴なし、生牡蠣、生肉摂取なし。海外渡航歴は2013年1月台北に1週間滞在。不特定多数との性交渉なし。サプリメント摂取なし。身体所見;意識清明、羽ばたき振戦なし、体温36.9℃、肝脾は触知せず。入院時検査所見;WBC 3600/μl、好酸球 8.5%、PT 36%、TBil 5.6mg/dl、AST 859IU/L、ALT 1449IU/L、NH 3 122μg/dl、ANA <40倍、AMA <20倍、HGF 1.15ng/ml、HA-IgM(-)、HBs抗原(-)、HBV-DNA(-)、HCV-RNA(-)、HEV-IgA(-)。腹部CTで肝volumeは544cm3と著明に萎縮していた。与芝の式でZ=1.9と急性肝不全が予知されたため、早急に肝生検を施行し、被疑薬であるメシタット®のみリンパ球刺激試験(DLST)を施行した。その後ステロイドパルス(メチルプレドニゾロン 500mg/日)を3日間施行後、プレドニゾロン(PSL) 25mg/day(0.5mg/body)で維持した。また治療と並行し生体肝移植のマネージメントを開始した。肝病理所見で、広範肝細胞壊死を認めた。DLSTの結果、Stimulation Index 686と陽性であり、DDW-J 2004薬剤性肝障害スコアリング9点でメシタット®による重症薬剤性肝障害と診断した。PSL開始後、ALT低下とPT上昇を認めた。経過中に一過性の腹水貯留を認めたが、対症療法のみで改善した。肝volumeは606cm3に増加し、腹水も消失したため第42病日に退院となった。医中誌やPubMedでの検索でメシタット®による肝障害の報告はない。また本症例の特徴として被疑薬の長期内服が重症化させた要因と考えられた。新規薬剤を開始した際は、漫然と内服を継続するのではなく、定期的なモニタリングが重要であると考えられた。 |
索引用語 | メシタット, 薬剤性肝障害 |