セッション情報 研修医セッション(卒後2年迄)

タイトル 55:

早期に脳症を合併し急激な転帰をとった病原性大腸菌O-157関連溶血性尿毒症症候群の一例

演者 笹川 麻由(横須賀共済病院消化器病センター内科)
共同演者 佐藤  綾子(横須賀共済病院消化器病センター内科), 石井 玲子(横須賀共済病院消化器病センター内科), 三好 正人(横須賀共済病院消化器病センター内科), 松田 浩紀(横須賀共済病院消化器病センター内科), 野澤 さやか(横須賀共済病院消化器病センター内科), 小島 直紀(横須賀共済病院消化器病センター内科), 山本 菜穂子(横須賀共済病院消化器病センター内科), 幾世橋 佳(横須賀共済病院消化器病センター内科), 伊田 春菜(横須賀共済病院消化器病センター内科), 田邊 陽子(横須賀共済病院消化器病センター内科), 渡邉 秀樹(横須賀共済病院消化器病センター内科), 新井 勝春(横須賀共済病院消化器病センター内科), 鈴木 秀明(横須賀共済病院消化器病センター内科), 小林 史枝(横須賀共済病院消化器病センター内科), 池田 隆明(横須賀共済病院消化器病センター内科)
抄録 【症例】82歳女性.刺身を摂取した5日後に出現した粘血便・発熱の主訴で当院救急外来を受診した.来院時,腹部全体に圧痛を認め,右腹部の反跳痛・筋性防御を認めた.血液検査:WBC 19300/μl, Hb 8.3g/dl, Plt 15.8万/μl, LDH 297U/l, T-Bil 1.8mg/dl, BUN 46mg/dl, Cre 2.77mg/dl.腹部CTにて上行結腸の著明な壁肥厚・腹水貯留を認め,感染性腸炎・腹膜炎の疑いで精査加療目的に当科入院となった.入院後,腸管安静・PIPC/TAZ・整腸剤投与を開始したが,血便・腹痛は遷延し腎機能障害もBUN 58mg/dl, Cre 4.03mg/dlまで増悪を認めた.第2病日に見当識障害が出現し,第3病日未明にはE1V1M1まで意識障害が増悪,血圧低下も認めたためDOA持続投与を開始した.頭部CTでは脳血管障害・脳浮腫などを示唆する所見は明らかではなく,急性腎不全・破砕赤血球を伴う貧血を伴っていたことから,溶血性尿毒症症候群(HUS)およびそれに合併した脳症が疑われた.第3病日から血漿交換・CHDFを開始したが,循環不全が増悪し第4病日に死亡した.後日,便培養にて病原性大腸菌O-157・Vero毒素が検出された.【考察】小児においてはHUSの約30%で脳症を合併するとされるが,成人例での報告は稀である.治療法はいまだ確立していないが,成人救命例の多くで血漿交換が施行されており,その治療効果が期待される.本症例は血漿交換導入時すでに循環動態が不安定であり救命し得なかったことから,HUS・脳症においては早期の診断・治療介入が重要であると考える.【結語】早期に脳症を合併し急激な転帰をとった病原性大腸菌O-157関連溶血性尿毒症症候群の一例を経験したので報告する.
索引用語 溶血性尿毒症症候群, 病原性大腸菌O-157