セッション情報 研修医セッション(卒後2年迄)

タイトル 81:

膵性腹水に対して内視鏡的膵管ステント留置術が奏功した一例

演者 渡邊 竜之介(筑波記念病院 消化器内科)
共同演者 添田 敦子(筑波記念病院 消化器内科), 越智 大介(筑波記念病院 消化器内科), 小林 真理子(筑波記念病院 消化器内科), 杉山 弘明(筑波記念病院 消化器内科), 本橋 歩(筑波記念病院 消化器内科), 設楽 佐代子(筑波記念病院 消化器内科), 池澤 和人(筑波記念病院 消化器内科), 中原 朗(筑波記念病院 消化器内科)
抄録 【症例】60歳代男性
【主訴】腹部膨満、食欲不振
【現病歴】約1か月間続く腹部膨満、食欲不振を主訴に当院外来を受診した。腹部造影CTにて多量の腹水貯留と膵仮性嚢胞を認め、試験穿刺による腹水の性状は血性であり、同日精査加療目的に入院となった。
【既往歴】慢性膵炎、脳梗塞 【生活歴】飲酒歴:ビール約1.5L+焼酎360mL/日(ほぼ毎日)
【身体所見】腹部膨満あり、腹痛なし
【検査所見】血液検査では、WBC 7720/μl、CRP 2.38mg/dl、アミラーゼ 412U/L、リパーゼ144U/L、トリプシン1587ng/ml、エラスターゼ1 1917ng/dlであった。腹水の性状は血性、蛋白定量 3.6g/dlであり、アミラーゼは 6719U/Lと上昇していた。細胞診はclass II、培養では一般細菌・抗酸菌ともに陰性であった。腹部造影CTにて、腹水の多量の貯留、膵石および膵体中部に2cm大の一部に石灰化を伴う膵仮性嚢胞を認めた。
【入院後経過】画像および腹水の所見から、アルコール性慢性膵炎の急性増悪に起因する膵性腹水と診断した。MRCPでは主膵管と交通する仮性嚢胞を認め、膵外や肝臓周囲にも及んでいた。入院後Day14にERCPを施行し、膵仮性嚢胞への造影剤の流入、及び被包化したfluid内への流出を認めたが、腹腔内への造影剤の漏出は認めなかった。以上の所見を踏まえて、治療として内視鏡的膵管ステント留置術(5Fr12cmのチューブステント)を施行した。ステント留置翌日に血清アミラーゼ値は 233U/Lと改善を認め、腹水も徐々に減少したため入院後Day27に軽快退院となった。ステント留置5週間後の腹部造影CTで腹水は消失しており、膵仮性嚢胞も9mm大までに縮小していた。
【結語】腹痛、炎症反応等の膵炎所見に乏しい膵性腹水症例を経験した。膵性腹水は日常診療で遭遇する機会は少なく、治療戦略も現時点で確立されているとは言い難い病態である。本症例は、内視鏡的膵管ステント留置術にて速やかな膵性腹水の改善を経験したので報告する。
索引用語 膵性腹水, 膵管ステント